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初めて見た日は初恋の始まり

「俺が初めて君を見たのは四年前だった。」


あれは冬が過ぎ、暖かい風が吹き出した春頃、任務のため馬に乗り隣町であるスタルツィア王国に向かった。スタルツィアの国民がどんな感じなのかもそのおかげで知っていた。みんなが大変な思いをし、みんなが必死に生きていた。


スタルツィアに滞在して二日目。

街を歩けば、その真ん中で沢山の人だかりの姿があった。人混みを抜ける人たちの手にはみんながこぞって食べ物を持っている。そして保存食のようなものも。


(誰が渡してるんだ…?スタルツィアの国王や王子か…?)


少しずつ前が見えるようになったときに見えたんだ。

笑顔で国民に食べ物や保存食を配る一人の女性の姿。


「マーガレット!こっちにも一つ保存食渡してちょうだい!」


「はい!お母様!」


笑顔でそう答えた彼女。

彼女の笑顔は綺麗で、心が癒され、任務の疲れが一気になくなるほど魅力され、一瞬で惹かれて夢中になった。俺の鼓動はずっと高鳴るばかり。


(マーガレットか…)


俺は邪魔にならないように人混みからどき、まだ任務が残っていたことからすぐに帰った。


翌日、無事に任務も終えシュタレスティアへ帰るために森を通る。そのとき、剣と剣がぶつかり合う音が聞こえた。何かあったのかと思い俺は足音を立てずに護衛たちを置いて一人でその場へ向かった。様子を見て飛び出そうと思い、木の影から様子を伺う。


(一体、誰が……はあ!?)


驚いたんだ。そこで剣を交わらせていたのは一人の男性と女性だった。俺はその男性には見覚えがあった。その男性はロンド・フィーレス。フィーレス公爵家の当主だ。剣術に優れていると有名なのと同時に公爵家としての名も轟かせている。


(では、あの女性は…?)


ロンド公爵に引けを取らない剣捌き。

一体誰だ。そんな興味が湧いてくる。

少し経ったあと剣の音が止まった。

すると、女性が話し始めた。


「お父様…!まだまだ私は未熟ですね…もっと教えてください…!」


(ロンド公爵の娘!?確か、フィーレス家には息子と娘がいたなぁ…フィーレス家の子供たちは夜会などにあまり参加しないと聞いていたから顔を見ていない…でも名前は聞いたはずだ…息子の方の名前は確か、ランストで、娘の名前は確か…)


「マーガレット。随分上手くなったがまだまだだぞ!もう少し力を抜いて剣は振りなさい!」


「はい!お父様!」


(そうそう…!マーガレット!……え?…マーガレットってまさか…昨日の…いやいや、そんなはずない…あんなに癒しに溢れた女性がそんなまさか…)


俺は信じられなかった。

でも、知りたかった。

俺も剣術が得意だ。そんな俺も彼女の剣術を見てただ者じゃないと思ったから。それに自分の娘でも忖度せず、ロンド公爵がちゃんと認める剣捌きをする癒しの溢れる彼女と同じ名前のマーガレットという女性がすごく気になった。まだロンド公爵と話しているその女性。顔を見てみると…


(…あんなに癒しに溢れる子がこんなにも剣を振れるのか!?)


驚いた。その女性の正体は俺が昨日見た女性。

俺が一瞬にして癒され、心が惹かれて夢中になったマーガレットだった。


その姿を見た瞬間、昨日以上に胸の高鳴りを覚えた。


(こんな感情…初めてだ…恋をしたのは君が初めてだよ、マーガレット……必ず君を俺の妻にする。)


そこで決意したんだ。必ず、俺がマーガレットを手に入れると。だが、そう上手くは行かなかった。機会を伺っても会うことは出来ず諦めていたときに、マーガレットがスタルツィアの王子と婚約したと聞いた。


(マーガレットが違う男の妻に…そんな…信じたくない…)


どうしようも出来ないのに、俺は最低なことに心の中でマーガレットが婚約破棄になることだけを願ってしまった。


そして、その日が来たんだ。

マーガレットが婚約破棄されたと話が流れてきた。


(今度こそ…)


そう思っているときにチャンスが訪れた。

たまたま任務の帰り道で一人の女性が盗賊たちに囲まれていた。その女性は紛れもなく俺が心に決めた相手であるマーガレットだった。


俺はマーガレットを助けに行き、これが近づけるチャンスだと思った。夜会で挨拶しか出来なかった俺はこれを機に仲良くなろうと…


「それで、今なわけだよ。」



四年も前からユーリス様は私を想っていたの…?

しかも初めて見たときって…

一目惚れってことなのね…


「君の婚約破棄をチャンスだなんて思ってしまう俺は最低だよね…君にとっては辛いことなのに…」


ユーリス様は視線を落として繋がれた手を見る。


「もし…私がロベルト王子殿下の浮気を何も知らずに婚約破棄されたならユーリス様のチャンスという発言は嫌だったと思います…でも、全てを知っての婚約破棄だったので、ユーリス様の発言に嫌な気持ちは少しもありません…」


「マーガレット…」


視線を私に戻して見つめてくるユーリス様。

でも、一つ疑問があった。


「ユーリス様…なぜそこまで頑なに言おうとしなかったのですか?私が何か言うと思ったからですか…?」


ユーリス様は少し微笑んで言った。


「それもあるけど、それよりも、公爵令嬢が他の誰かにしかもそれが男である俺に剣を振っているのを見られていたなんて知りたくないだろう?それに…四年も前から君を想っているのに何も行動を起こさなかった俺が情けなくて言いたくなかったんだ…」


情けなくなんてないのに…


「ユーリス様…確かに公爵令嬢として剣術を学んでるなんて知られれば婚約は上手くいかないので嫌でしょう。でも、私は自分に誇りを持っています。お父様に剣術を認めてもらったことに。それに、嬉しいです…四年も前からずっと想ってくださっていたなんて。情けなくなんてないですよ…ユーリス様は私を助けてくださいましたし、それに、お父様が剣術を認めた中にはユーリス様もいましたから…」


「!?俺が…ロンド公爵に…?」


「ええ。一度、ユーリス様の剣術を見たときにすごいと思ったそうです。だから、情けないなど思わないでください。少なくとも私は思いませんから…」


「僕もです!僕も、ユーリス第一王子殿下を情けないとは思いません!あの人数の中からマーガレット様を守ってくださったのですから…!」


「レイス!?いつからいたの!?」


「えへへ…ユーリス第一王子殿下が初めて見たときを話しだしたときです!」


「…ユーリス様…気づいていたのですか…?」


「いや…俺も気づかなかった…」


「柱の裏で聞いてましたからね!」


えっへんという声が聞こえそうなほど自慢げな顔をしているレイス。ふふっ…レイスらしいけど…


「あははっ!」


「??ユーリス様…?」


突然笑い出したユーリス様を見て不思議に思う。


「ありがとう。二人のおかげでなんか自信がついたよ。」


「それなら良かったです…!」


ユーリス様が満面の笑みでそう言うから私まで笑顔になる。ずっと鼓動が高鳴る私は、もう確信したんだ。


(ああ…私は、ユーリス様が好きなんだ…)


まさかこんなに早く好きになってしまうなんて想像もしていなかった。普通、恋って時間をかけるものでしょ?それなのにユーリス様にはすぐ恋に落ちてしまった。ユーリス様が助けてくれた時に、「愛する人」と言ったからそれに引っ張られてなのかもしれない。


でも、私のこの気持ちは嘘じゃない。

ユーリス様は恋をしたのは私が初めてだと言った。

…ユーリス様…それは私も同じですよ…


私が恋をしたのはあなたが初めてです。ユーリス様。

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