初めての感情
「マーガレット!おはよう!」
朝からなぜか屋敷に来ていたユーリス様。
「ユーリス様…おはようございます。どうしてここに…」
「マーガレットを屋敷へ招待しようと思って。」
屋敷に…?屋敷ってまさか…
「トルーレン家にですか…?」
「そうだよ…!マーガレット。君のことをお父様たちに話したらぜひ、会ってみたいと言っていたんだ!それで今日、どうかな?」
え、急すぎない?
トルーレン家。まさにシュタレスティア王国の王家だ。ユーリス様のお父様ということはアリオス国王陛下。国王陛下が私に会いたいと…?信じられない………
「マーガレット…?もしかして今日は何かあったのか?」
「あ、いえ…そういうわけではありません。ただ、信じられなくて…国王陛下が私に会いたがっているというのは…」
「伝えたんだ。愛する人を見つけたと。」
「…はい?」
「言っただろ…マーガレットは俺の愛する人だと。ずっと縁談の話は来ていたが全て断っていた。君を初めて見たときから、君を妻にすると決めていたから。そんな君が婚約破棄されてこの国にやって来たと聞いて、失礼ながらもチャンスだと思った…こうして君とやっと近づけた。だからお父様に言ったんだ。愛する人が見つかったと。」
私の目を真っ直ぐ見て真剣に話すユーリス様。
でも、ずっと気になっていた。
「初めて見たとき」という言葉が。
私は知らないうちにユーリス様に会っていたのか…
でも、見たときと言っていたから私は知らなくて、ユーリス様だけが私を知っていたということなのかしら…謎は深まるばかり…この際、ちゃんと聞くべきよね…
「ユーリス様…私と初めて会ったのは夜会のときではないのですか…?」
「…違うよ。君と挨拶を交わしたのはあの夜会が初めてだけど、僕はその前から君を見ていたよ。君と面と向かって会ったわけではない。どちらかといえば、僕がたまたま通ったときに君の姿を見て、そこからだよ。」
私の姿を見た…
「一体どこで…」
「秘密だ…!」
口に人差し指を当てて笑うユーリス様に私は鼓動が高鳴った。でも、ちゃんと知りたい。もし……もし…この鼓動の高鳴りが恋だとするなら、これは私にとって初めての感情だ。
「教えてください。ユーリス様…一体どこで私を見たんですか…?」
「秘密だよ、マーガレット。」
なら、屋敷には行かないと言おうと思ったけど、国王陛下が会いたいと仰っているのに、このことでそれを無視するのはよくないと思う…なら…
「どうしたら教えてくださいますか…?」
聞くしかないでしょ。
「まだ教えないよ。君が俺のものになったら教えてあげる。」
絶対に教えないっていう意思が見える…
そこまでして教えたくないのはなぜなの…?
余計に気になるじゃない…!
だったら最終手段…
「…ユーリス様…」
「ん?どうしたんだ?マーガレッ…」
──チュ
「これで教えてくださいますか…?」
私の初キスは昨日ユーリス様に奪われた。
それなら、もう何も考えることも恐れる必要もない。だから、ユーリス様の唇に軽くキスをした。
唇を離せば熱を帯びたような目で私を見つめるユーリス様。
「ほんとに、かわいいね…マーガレット。」
──チュ
「!!!」
今度はユーリス様からキスをされる。
それも、何も考えられなくなるほどの甘くて長く激しいキス。
「んっ……はぁ……っ、ん……」
頭が真っ白になっていく…
なんで、嫌じゃないんだろう…
こんな短時間で私は好きになってしまったのかな…
ユーリス様のことを…
唇が離れると私は力が抜けてしまった。
だけど、そんな私を受け止めてくれたユーリス様。
「マーガレット。教えてあげるよ。君を初めて見たときのことを。」
そう言ってユーリス様は私の手を握り話し始めた。