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正義のヒロインは魔王様!?〜巫女見習いと元魔王が紡ぐ絆物語  作者: 石島マコト
第2章

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第015話 病み上がりヒロイン

3/12誤字を修正しました

 ルーシーさんへの霊力提供の反動で倒れてしまった私。その時に頭を打った可能性も考慮し、大事をとって今晩は入院することに。

 今は夜の9時過ぎ。病院の消灯時間はすでに過ぎている。特にできることもないので大人しく眠りにつこう。そう思っていたんだけど……


 眠れない。布団や枕が変わったからとか、昼間ずっと眠っていたからとか、考えられる理由はいくつかある。だけど一番の原因は神代先輩のことだろう。


 白峰霊山へと向かう大人の一団に紛れていた憧れの先輩・神代優咲。私以外にも彼女に憧れている生徒は多い。中には熱狂的なファンもいて、ファンクラブまである。さすがに私は所属していないけどね……


 普段はクールでカッコいい人。それでいて生徒が困っている時は手を差し伸べてくれる優しい生徒会長。それが神代先輩だ。


 そんな神代先輩が一体何の目的で大人の人たちと一緒に霊山へ向かったのか。気になってしまって寝付けない。


『眠らないのか?』


 私が神代先輩のことを考えていると、不意に脳内に声が響いた。


『はい……。神代先輩のことが気になっちゃって……』

『だが、考えてもわからんのだろう? ならば考えるのはやめて、早く休むべきではないか?』

『それはわかっていますけど、そう簡単にはいきませんよ……』


 ルーシーさんの言うことはごもっともだ。いくら考えても答えなんて出ないのはわかっているんだから。

 だからといってそう簡単に気持ちは切り替えられない。頭に浮かんでくる疑問は止められない。


『そんなに気になるのなら、本人に直接確認してはどうだ? 同じ学校に通っているのだろう?』

『そ、そんなことはできませんよ! 同じ学校の生徒と言っても、一度も話したことなんてありませんし……』


 神代先輩はみんなの憧れの存在。クラスメイトや同じ生徒会のメンバーならともかく、私のような一般生徒Aが気安く話しかけられるような相手じゃない。


『私にとっては雲の上の人なんです。だから質問なんて……』

『うーむ。その感覚は私には理解できんな……』


 そうだった。ルーシーさんは元魔王。一般魔族Aじゃなくて神代先輩のように人の上に立ち、憧れられる側。私のようなモブの感覚なんてわからなくて当然かもしれない。


『本当にそいつが皆の憧れに相応しい者ならば、お前の問いにも向き合ってくれると思うのだがな』

『…………』

『まあ無理強いはせん。だがお前にはしっかりと休息を取り、回復してもらわんと困るんでな』


 確かに、私の不調は私だけの問題じゃない。ルーシーさんの回復にも関わるし、祖父母やトモちゃん、神社のみんなにも心配をかけているんだ。神代先輩のことは気になるけど、今はきちんと身体を休めるのが先決なんだよね……


 目を閉じ、布団を被る。だけどいろいろな不安が脳裏に浮かび、やっぱり眠れない。


『そんなに眠れないなら私が魔法で一発、ドカンとやって気絶……』

『ね、寝ます! ちゃんと寝ますから! だから魔法はやめてください!!』


 眠れないのなら魔法で無理矢理意識を奪う、というのはさすがに無茶がすぎる。入院が長引くことになりそう。ううん、それどころか病院ごと吹き飛びそうだ。


 ルーシーさんの実力行使を防ぐため、私は眠りについた。実際は寝付けていないけど、彼女に何もさせないために寝たフリをする。心の中にいる彼女相手に通用するのかはわからないけど。


「ふわぁ〜…………」


 そうこうしているうちに、徐々に眠気が襲ってきた。そろそろ眠れそう。


「おやすみ、ルーシーさん……」


 ルーシーさんの返事を待たずに、私の意識は闇に落ちた。




 病院での一夜が明け、今日は朝から検査尽くしだった。ありがたいことに今まで健康に生きてきたため、どの検査も初体験のものばかり。


『これで検査は終わりか?』


 ルーシーさんの声が脳内に響く。彼女の問いに、私は頷いた。


『ところであのMRIとやらは凄かったな! 思わずテンションが上がってしまったぞ!』

『えぇー……。私はあの大きな音とか苦手だなぁって思いましたけど……』


 やっぱりルーシーの感性はちょっと理解しがたい部分がある。まあ、人間界の医療設備自体が物珍しく感じるのかもしれないけどね。


 一通り検査を終えた私は迎えに来てくれていたお祖母ちゃんと合流し、今後の説明を受けた。恐らく過労の類のため、少なくとも今日いっぱいは安静にしておくように、とのこと。

 そして、もしかしたら今回の検査結果次第では再検査や入院が必要になるかもしれない、とも告げられた。このまま何事もなく快方に向かってほしいと切に願うよ……


 入院費や検査費の精算を済ませ、私たちは帰路につく。帰りはお祖母ちゃんの運転する車だ。うちのお祖母ちゃんはまだまだ元気で車の運転も現役なんだよね。運転する姿も意外と様になっている。もしかしたら若い頃は凄かったのかも……なんてね。


「お祖母ちゃん、心配かけてごめんなさい。それにお金も……」

「お金なんて気にしなくていいんだよ。それよりも、無理をしすぎたことを反省なさい」

「はい……。本当にごめんなさい……」


 普段は優しいお祖母ちゃんだけど、怒る時はしっかり怒る。正直に言うとちょっと怖い。


「頑張り屋さんなのは舞桜の良い所だけどね、倒れるまで無理をしちゃいけないよ。優しい舞桜のことだから、誰かのために無理をしてしまったのかもしれないけどねぇ……」

「…………」


 さすがお祖母ちゃん、鋭い。少し身体がビクッとしてしまった。私は愛想笑いを浮かべながら「気をつけるね」とだけ告げ、話を逸らす。


「そ、そうだお祖母ちゃん。昨夜(ゆうべ)テレビで観たんだけど、うちの神社に警察とか自衛隊が来たって……」

「ああ。若い子たちが相手をしてくれたみたいだ。だけど一番の目的は霊山の方だったみたいだねぇ」


 霊山へ向かった大人たち。そして神代先輩。テレビ越しに観た彼らの姿が再び脳裏に浮かび上がる。


「あと、うちの学校の生徒も映っていたみたいなんだけど、お祖母ちゃんは何か知らない?」

「さぁねぇ。そこまでは聞いていないよ」


 神代先輩のことも訊いてみたけど、どうやらお祖母ちゃんは何も知らないみたい。そうなると神社の人たちに訊くか、あとは神代先輩に訊くより他はないのかも。先輩と話すのは正直難しいと思うけどね……




 家に着く頃には13時を回っていた。今日は朝から何も食べずに検査だったため、もうお腹ペコペコ。


「ちゃんと食べられそうかい? 辛いようならお味噌汁とヨーグルトだけでも……」

「だ、大丈夫! 普通に食べられるよ!」


 すごくお腹が空いているのに、お味噌汁とヨーグルトだけなんて困る。今は食べない方が身体に障りそうなのに。


「本当に大丈夫かい? また無理してるんじゃないだろうね?」

「本当に大丈夫だから! お祖母ちゃんの作るごはん、お腹いっぱい食べたいなぁ」

「嬉しいけどお腹いっぱいは身体に良くないから腹八分にしておきなさい」

「はーい」


 お祖母ちゃんが何を作ってくれるのか、心待ちにしながら待つ。本当は手伝いたかったんだけど、「病み上がりなんだからゆっくりしてなさい」と言われてしまった以上、今は大人しく待つしかない。


「はい。お待ちどおさま」

「ありがとう、お祖母ちゃん」


 お祖母ちゃんが用意してくれたのは親子うどんとヨーグルト。簡単に言うと親子丼のうどん版だ。

 でも、いつもの親子うどんとは少し異なり、病み上がりの私でも食べやすいように様々な工夫が施されていた。ネギや鶏肉は普段よりもさらに細かくされていて、うどんも少し柔らかめに茹でてある。ヨーグルトにはリンゴとバナナが入っており、うどんの具材同様細かく刻まれている。


 ――ふーっ……ふーっ……ズズズッ。


 息で冷ましながら熱々のうどんをゆっくり啜ると、脳内に声が響いた。


『ふむふむ。この白くて長い食べ物……うどんと言ったか。これはそうやって食べるのだな』

『そうですね。日本ではうどんに限らず麺類はこうやって啜って食べることが多いですね』


 海外の人にはあまり好まれないみたいだけど、これも文化の違いだから仕方がないと思う。とは言えあまりにも大きな音を立てて啜るのは良くないとは思うけどね。


『口から鼻に抜ける匂い……喉をつるつると通る感覚……中々興味深い』

『今は消化を良くするために柔らかく茹でてありますけど、普通はもう少し硬くてコシがあるんですよ』

『こ、腰……? 食べ物にも腰があるのか?』


 腰じゃなくてコシですよルーシーさん! だけどコシってどう言えば伝わるんだろう?

 説明に困りながらも食事を続けていく。


『病院食とやらは少々物足りなかったが、お前の祖母が作る食事は良いな。こういうのを「美味(うま)い」と言うのだろうか』

『そうですね。食事を取らないということは、今まではそういう感覚もなかったんですよね?』


 食事を取らずに100年以上生きてきた。その感覚は全く想像できない。魔族たちは私たちで言う呼吸でエネルギー補給までできる、みたいな話だったけど、それでもやっぱり食事をせずに生きるというのはピンとこない。


『ああ。だが……美味いという感覚を味わったことでわかったのだが、瘴気は不味い。それもかなり酷いレベルでな』

『そ、そんなに酷いんですか……?』

『酷いな。毎度吐きそうになっていた』


 食事の楽しさを知らなかったどころか、エネルギー補給の度に吐きそうになるなんて私には考えられない。そんな生活に100年も耐えるなんて、私には絶対に無理だ。


『それも次第に慣れたがな。しかしもっと昔……お前と出会うより前は気にしたことが無かった気もするな』

『え?』

『というか、思えばお前と初めて出会った直後から不味く感じるようになったような……?』


 どういうことなんだろう? まさか私のせい……じゃないよね?


『まあ昔のことだ。今更気にしても仕方がないだろう。それよりも食への興味の方が今の私には重要だ』

『そ、そうですか……』


 どうやらルーシーさんはすっかり人間界の食事に目覚めてしまったみたい。だけど食事から栄養を補給できるようになったわけじゃないんだよね? 少し今後が心配になってきた。


「ごちそうさまでした」

「お粗末様でした。それじゃあ舞桜、今日は部屋でゆっくりしてなさいね?」


 食事を終えた私。いつも通り後片付けをしようとしたけど、準備の時のようにお祖母ちゃんに止められてしまった。

 私の体調を気遣ってくれるのは嬉しいけど、さすがに過保護な気が。だけどお祖母ちゃんは結構頑固。ここは大人しく甘えさせてもらおうかな。


 本当は勉強をしたり読書をしたりもしたいけど今日のところは我慢。大人しく寝る支度をしよう。明日には学校に復帰したいしね。


 歯を磨き、あとはお風呂に入って寝るだけ。だけどそのお風呂で一騒動起きるなんて、この時の私は予想だにしていなかった――

お読みいただきありがとうございました。

続く第16話も投稿しております。よろしければお読みください。

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