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正義のヒロインは魔王様!?〜巫女見習いと元魔王が紡ぐ絆物語  作者: 石島マコト
第1章 巫女見習いと魔王様

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第010話 嘘と秘密の共生生活

 終わった。全部終わった。絶対に終わった。清純な巫女なのに、あんな痴女みたいな格好で戦っていたなんて……


『……舞桜? おい、舞桜。聞いているのか? ……おーい! おいったらおい!』

「無理無理絶対無理もう私巫女になれないお嫁に行けない…………」

『聞けよ!!』


 田舎町だけあって近所付き合いも多い土地柄。噂が広まるのなんてあっという間だ。私だとバレたら一巻の終わり。


『はぁ……。おい舞桜、何をそんなに落ち込んでいる?』


 落ち込んでいる理由なんてわかりきっているだろうに、どうしてそんなことを訊くんだろう?


「だ、だって、あんな露出度の高い、痴女みたいな格好…………」

『何?』

「だからさっきのデビライズ姿! あんなの、完全に痴女じゃないですかぁ!!」


 言ってしまった。普段からそんな格好をしている人(魔族)に。


『痴女? 何を言っているんだお前は。あれは魔王の正装なのだぞ?』

「……はい?」


(あ、あれが正装!? 魔族のセンスってそういう感じなの!?)


 冗談だと言ってほしい。あれを良しとするセンスは到底理解できそうにない。私も決してファッションセンスに自信がある方じゃないけど、大抵の人間には理解できないものだということはわかる。


「あんな格好が正装だなんて、魔族の感覚ってどうなっているんですか!? あれじゃ完全に痴女ですよ、痴女!!」

『なんだと!? 馬鹿を言え!! カッコいいだろうが!!』


 数分前まで心を通わせて一緒に戦っていたとは思えないほど、私とルーシーさんの意見は対立していた。


『ハァ……ハァ……。ま、まあいい。今日のところはこれくらいにしておいてやる』

「ぜぇー……ぜぇー……。そ、そうですね。ずっとここで言い争っているわけにもいきませんしね……」


 このまま言い争っていても埒が明かない。そう判断し、ひとまず休戦する私たち。


 ――ブー! ブー! ブー!


 突然、私のスマホが激しく振動した。画面を確認するとそこには幼馴染の名前が。


 ……しまった! ルーシーさんのことや魔族たちとの戦いで完全に忘れてしまっていた。画面をよく見ると何度も着信があったみたい。


 絶対に心配しているだろうし、もしかしたら怒っているかもしれない。そう思いながら恐る恐る応答をタップする。


「も、もしもし……?」

『あ!? や、やっと出た! ちょっとマオ! 今まで何やってたわけ!?』


 トモちゃんの勢いに思わず気圧されてしまう。


「え、えーっと、霊山がちょっと気になっちゃって……」

『…………』


 適当にはぐらかそうとしたらトモちゃんは黙ってしまった。さすがに苦しかったかも。


『あの後アンタを追いかけてアタシも霊山に行ったんだけど……』

「えっ!?」


 まずい。咄嗟についた嘘が秒でバレてしまったかもしれない。


「す、すぐに下山したから入れ違いになっちゃったのかなぁ……?」

『ふーん……』


 彼女は私よりずっと聡い。この嘘もすぐに見破られそうだ。というかすでに見破られてしまっているかもしれない。


『……ま、いいや。無事だったなら良かったよ』

「う、うん。心配かけてごめんね?」

『ホントだよ、まったく。やっぱ無病息災にしといて正解だったかもなー……』


 こんなに心配をかけてしまっているのに、嘘をついて誤魔化すのは本当に心苦しい。

 だけど魔族と合体して変身して戦っていた、なんて言えるはずもないし、言えたとしても信じてもらえるとも思えない。


『そんじゃね、マオ』

「う、うん。また明日、学校でね」


 トモちゃんとの通話を終え、私は深い溜め息をついた。罪悪感が胸をギュッと締めつける。


『今のは?』


 脳内に声が響く。


「私の……幼馴染です」

『……そうか』


 電話の相手が誰だったのか、確認するごく短いやり取り。この時私はトモちゃんのことを親友(・・)とは紹介できなかった――




 霊山への落雷にルーシーさんとの再会、そして魔族との戦い。とても放課後の数時間のうちに起きたとは思えないほど、本当にいろいろな出来事があった。

 すっかり日も暮れた頃、ようやく帰宅することができた。きっと祖父母たちも心配していることだろう。


 ――ガラガラ……


 恐る恐る玄関の戸を開けた。なるべくこっそり入ろうと戸を開けたけど、引き戸がレールを滑る音が響いてしまう。


「た、ただいま〜……」

「おお、舞桜。無事じゃったか!」


 家に帰るとすぐに祖父母が出迎えてくれた。トモちゃんと同じく、すごく心配してくれていたみたい。


「私は大丈夫だよ。お祖父ちゃん、お祖母ちゃんも無事で良かった」

「友華ちゃんもすごく心配しとったからねぇ。ちゃんとお礼、言っとくんじゃよ?」

「う、うん。わかっているよ……」


 トモちゃんの名前が出る度に胸がズキッと痛む。嘘をついてしまった罪悪感が蘇る。


「…………はぁ」

『そんなに悩むなら嘘などつかずに正直に話せばいいだろう?』

「……言えませんよ」

『それは何故だ? 親しい仲なのだろう?』


 いくら仲が良くても言えないことはある。むしろ仲が良いからこそ、言えないことだってある。


「魔族と戦っていたなんて信じてもらえるかわかりませんし、信じてもらえたとしても心配をかけちゃうだけですから……」

『なるほどな……。人間はそういうものなのだな』


 人間と一括りにしていいかはわからないけど、とにかく今の私にはトモちゃんに全てを打ち明ける気はなかった。




「ごちそうさまでした」

「はい、お粗末様でした」


 夕飯を終え、手を合わせる。今日もお祖母ちゃんの作る夕飯は美味しかった。普段は私も手伝ったり、私だけで作ったりもするんだけど、今日は仕方がない。食後の後片付けだけ手伝おう。


 私が食器を洗っていると頭の中に声が響いた。


『なるほど、これが人間のエネルギー補給か』

「あまりエネルギー補給って言い方はしないですけどね。普通は食事とかごはんって言います」

『おおっ、これが食事というやつか!』


 食事を知らないなんて、ルーシーさんは普段どうやってエネルギーを補給していたんだろう?


「魔族ってごはんを食べないんですか?」

『中には食べる種族もいるが……基本的には食べないな』

「じゃあどうやってエネルギー補給しているんですか?」


 気になったので早速質問してみた。まさか人間の生き血を啜る、なんて言い出したりしない……よね?


『魔界に住む魔族は普通、瘴気を吸ってエネルギーにしているのだ』

「瘴気?」

『ああ。魔界の至る所に充満していて、そいつを吸っているんだ』


 人間の感覚で言うと、呼吸で酸素と一緒に栄養も補給できる感じなのかな? だとしたらすごく便利そうだけど、食事の楽しみがないのは寂しいかもしれない。


「あれ? 今魔界の至る所に充満しているって言っていましたけど、人間界……私たちの世界にもあるんですか?」

『いや、ほとんどない』

「えっ!?」


 じゃあルーシーさんはどうやって生活して行く気なんだろう? 魔界に戻る方法が何かあるのかな……


『瘴気を吸う以外にもエネルギー補給の方法はあるんだ。というか今も補給している最中だしな』

「へ? ど、どうやって……?」

『舞桜、お前の霊力だよ。私はそこからエネルギーを補給している』


 ルーシーさんのエネルギー源。それは私だった。魔力の回復やケガの治療に私の霊力を使っているのは聞いていたけど、まさか食事の代わりも務めていたとは……


「つまり、私の霊力がルーシーさんのごはんってことですか!?」

『まあ、そういうことになるな』

「なんだか寄生されているみたいなんですけど……」


 寄生されているみたい、というか本当に寄生されているのかもしれない。


『そこはせめて共生と言ってくれ。寄生だとなんというか……虫っぽいだろ?』

「……確かに虫みたいな扱いは失礼でしたね」


 私からルーシーさんへの供給の方に偏っている気がしないでもない。だけど一応デビライズはルーシーさんの協力あってのものだし、共生と言えなくもないのかな?


『ちなみに他の魔族は悪の心を持った人間の生命力で代用しているようだな』

「……他の例を聞くとやっぱり寄生のような気がしてきました」

『おい』


 私の霊力や悪い人の生命力が魔族にとっての栄養。じゃあもし私の霊力が尽きてしまったら、ルーシーさんはどうなってしまうんだろう? 気になった私はすぐにこの疑問をぶつけてみた。


『……わからん』

「え?」

『霊力がなくなった後、生命力で代用できるならそれを。できないなら……恐らく他に霊力を持った依代を見つけないとエネルギー切れで死ぬな』


 ということは私の霊力がなくなってしまったらルーシーさんの命にも関わるかもしれないってこと!? そう聞くと一気に責任重大な気がしてくる。


『そういうわけだから、すまんがまだ厄介になる』

「まあ、そういうことなら仕方がないですね」


 一抹の不安を覚えたけど、今さらルーシーさんを見捨てるなんて私にはできない。こうしてルーシーさんとの奇妙な共生生活が始まったのであった――

お読みいただきありがとうございました。

次回、第11話は明日3/1(日)投稿予定です。よろしければまたお読みください。

※第11話までは毎日更新予定、その後は週2回更新を予定しております。

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