第二話 俺の常識ってなんだっけ?
俺は、近くにいた子供に少しあの町のことを聞いた。聞き終わると、子供は用事があるのか走ってどこかへ行ってしまった。
「あ~、困った。どこか分からない場所に来ちまったみたいだな...」
俺は地図は基本的に持たない主義なので、大陸のどこに位置しているのか、見当もつかない。てか、ちゃんと元の大陸にいるのかすら不安になってくる。
「しかたねぇ、とりあえずあの町に行って情報を集めてみるしかねぇか!」
そうして俺は、深く考えるのをいったんやめ、子供が教えてくれた巨大な街、東京へと歩み始めた。
ー東京ー
「うわ~、でっけぇ!」
東京に着くと、大きな建物が多く建っていて、まずそこに驚いた。王宮の半分くらいの高さの建物があちこちに建っているのだ。前にいた国ではこうもでかい建物はなかなかない。それこそ、王宮の周りとか大きな宿みたいなとこしかない。
とりあえず、この町のことが知りたかったのでそこらへんの人に声をかけてみた。
「すまん、ちょっといいか? この街ってどんな町なんだ?」
俺がそう聞くと、その人は不思議そうな顔をして答えた。
「あなた、ここがどんな場所かも知らずに来たの?よっぽど田舎に住んでいたのね。ここは、日本の中でも一番の都市、東京よ。我が大日本帝国が誇る建物とかそういう新しいものがどんどん出てくる街なのよ。」
「そ、そうなのか。すまんな、いきなり聞いちゃって。俺、地図とかあまり見なくて...」
「そうなのね。とりあえず、初めての東京を楽しんでね。きっとここにいれば驚くことが多いと思うわよ。」
「あぁ、そうみたいだ。教えてくれてありがとな。」
俺は、さっとお礼を言って歩いて行った。話し終えたときに、服が鎧みたいとボソッと言われたことは気になったが。
てか、どうなってんだよ。大日本帝国とか東京とか。ここが町なのか国なのかももうわからなくなっちまったぞ。
いろいろと考えていると、近くの店らしきものに文字がびっしりと書かれた紙が束になってたくさん置かれているのが目に入った。本みたいだがそれにしては薄すぎる。あと、なんか灰色がかってる気がする。
少し気になって、その紙を見てみる。
「ワシントン海軍軍縮条約締結!」
なんだそりゃ。海軍とか規模が大きすぎるだろ。俺の国に軍なんてなかったぞ。せいぜい、王宮騎士団ぐらいだったし、軍を持っているような大国なんて数えるほどしかない。
「こらこら、読みたきゃ買いな!」
おっと、読みすぎて怒られちまった。そういや、俺の国でも店の商品を触りすぎて怒られたっけな。
「すまん、俺の国ではこんなのなくてつい気になっちまってな。」
そう言うと、店主は驚いたように聞き返してきた。
「へぇ、お前さん外国から来たのかい。珍しいな!最近はいろいろと落ち着いてきたからな。東京を楽しんでいくといいさ。」
幸い、店主のおじさんはいい人のようで特にそれ以上何も言われなかった。
それにしても、あの紙の意味が気になるな。もしこの国というか町というかが軍を持つくらいな大国なんだったら、目を付けられないようにすぐに帰りたいものだ。
ぐ~~
突然俺の腹から、音が鳴る。
そういや何も食ってなかったっけ。なんか食べなきゃな。
とりあえず町から出てモンスターでも狩るか。
「なぁ、おじさん。ここら辺においしそうなモンスターとかいないか?」
俺は、さっきのおじさんに聞いてみた。だが帰ってきた反応は俺の予想してたものとはかなり違う反応だった。
「は?もんすたー?お前さん何言ってんだ? もしかして外国で流行ってる新しい食べ物かなんかか?すまんが、俺はそんなもの知らないなぁ。腹減ってるんだったら、そこらへんの店に入って食べるといいぞ。」
なんだと、モンスターを知らないだと。モンスターなんてこの世界の常識中の常識だろ。
だが、とりあえずおじさんに俺はお礼を言う。
「ああ、そんなとこだ。ありがとな、俺まだこの町に慣れてなくてさ。」
適当に流して俺はこの場を去った。
いろいろと意味が分からないが、考えるよりも腹が悲鳴を上げている。何か食べなければ。
とりあえず、おじさんが言ってたように店に入ってなんか食うか。
そうして俺は、そこら辺にあった店に入ってみた。
店に入ると、元の国の酒場みたいに普通に椅子やら机やらがならんでいたので、適当なところに腰を下ろした。
そして、俺は気づいた。
なにが食べれるんだここ。全く調べてなかったせいで何もわからない。
「すまん、この店のおすすめってあるか?」
とりあえず、この店の店主のような人に聞いてみた。
「この店のおすすめ?もちろん牛鍋だよ。それにするか?」
「ああ、それで頼む。」
やはり、分からないときは人におすすめを聞くに限るな。
そして、俺は運ばれてきた料理を食べた。なんか、モンスターの肉を水とかと一緒に煮て料理した時みたいな味がした。
「うまかったよ。お代はこれでいいか?」
そういって、俺はさっきのおじさんに銀貨を手渡す。
「なんだこれ?銀貨!? お客さんいいのかい?こんなもん受け取っちまって!?」
おじさんが驚いている。なんだ?普通だろ。
「別にいいけど、てかそれで足りるか?」
「ああ、これで結構だ。また来てくれよ。」
そうして、俺はこの店を去った。
やはり、この町は俺の常識が著しく欠けている気がする。それとも逆なのか?
さっぱりわからない。やはり、この町をよく知ってみたいな。こんな場所に来たのは初めてだし。
だんだんと冒険者としてのプライドのようなものが湧き上がってきた。