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第一話 平和で過ごせるはずだった

 俺は冒険者である。

 ここではよくいる、しがない冒険者だ。

 俺はいつものように、国の中を歩いて店を見て回っていた。


「お、兄ちゃん。今なら安くしとくからなんか買ってきなよ。」


 俺は店のおじさんから声をかけられた。どうやらこの店はパンを売っているようだ。

 この国は、市場のように露天商が店を広げるスタイルが主流で、客との距離が近い。


「すまんな、俺はさっき腹を満たしたところだ。」

 無視するのは俺のポリシーに反する。こういう時は、サッと断ってやるのがいいのだ。


「そうかい。食べたくなったらいつでも来いよ!」


 軽く手を振ってこの店から離れる。この国の店の人は、感じの良い人が多い。


「さて、お昼も済んだことだしダンジョンにでも出かけるかな。」


 この世界の冒険者は、旅に出てモンスターを狩って....みたいなことはあまりしない。大体が、採集などで集めた木の実や珍しい植物,たまに鉱石なんかを売って生計を立ててる連中が多い。

 つまり俺は変わり者ってことだ。

 

 俺は、冒険者とは冒険をしてこそ意味がある!と思うタイプなので、ダンジョンに行ったりモンスターを狩ったりして、結構危険な道を歩みながら生活している。


「今日の晩飯は、ゴブリンのトロトロ煮でも作るかな。」

 そんなことを考えながら、国の門を通過する。門の外には、広い草原が広がっている。暖かいそよ風が俺の頬を撫でる。


「気持ちの良い天気だな。」

 そして、俺はダンジョンに向かって走り出した。


 

~ ダンジョン到着 ~

 今日のダンジョンは誰も踏み入ったことのない未踏のダンジョンだ。俺が、迷ったときに適当に歩いてたら見つけたものだ。その時は、無視して国に帰ったがその後にどうしても気になってしまった。


「改めてみると結構でけぇなぁ。」


 俺も冒険者として、未踏のダンジョンというのはやはりワクワクする。なんかこう、内から湧き出てくるみたいだ。子供心が。

 そして、俺はダンジョンに入っていった。


 ダンジョンは薄暗く、少し不気味な雰囲気を漂わせている。想像していたよりもボロく、洞窟のようなダンジョンだ。俺は、さすがに暗いと感じたので魔法を使う。


「フレア!」


 暗いダンジョンの中で俺の声が反響する。

 俺が使ったのは、初級の炎系魔法だ。魔法を詠唱すると、俺の手のひらの上に小さな火の玉が現れる。この世界の学校の中で一番初めに教わる攻撃魔法だが、こういう時には明かりにも使える。


また俺は、奥に向かって歩き始めた。コツコツと、俺の足音が反響して聞こえる。やはり、ダンジョンてのは不気味さがあるな。


ドゴン!!


 しばらく歩いてきた時、突然爆発音のような音が聞こえた。俺は何事かと、前と後ろを確認してみる。だが、異変は感じられない。

 俺は不気味に思いながらも、とりあえず前へと進んでいく。


 またしばらく歩くと、今度は奥に明かりのようなものが見える。

 もしかして、ダンジョンに見せかけたトンネルだったとでもいうのか?俺の苦労(?)は何だったのか。

 いろいろと文句を言いながら、明かりのある方へと進んでいく。その明かりに導かれるように歩いてダンジョンかもわからないものを抜けた。そして、その先に見える景色に俺は驚いた。


「おいおい、俺は変な物なんて食べてねぇぞ...」


 ダンジョンを抜けた先に見えたのは、草原ではなく町だった。正確に言うと、草原の少し先に街が見えたのだ。

 俺が言いたいのは、町が見えたことなんかじゃない。その町は王宮で使われるような、オレンジの四角い岩で作られた家がいくつも建てられていて、煙まで出ているということだ。


「こんな町きいたことねぇぞ。」


 俺は驚きながらもその町に向かって歩き出した。

 その途中、町の方から子供が走ってきた。5~6歳ぐらいだろうか。そして俺を指さして言った。


 「このおじちゃんてつのふくきてる~!」


 俺が珍しい恰好をしているというように、目を丸くして驚いているようだった。確かに俺は、そこらの冒険者よりも武器や防具はそろえているつもりだが、そこまで驚かれるほどのものは身に着けていない。続けて子供は言った。


「かっこいい~!」


 俺をほめてくれるのはうれしいが、それ以上に気になることはたくさんある。なんだその、からふるな服は。そんな布なんて、俺の国じゃ高級品だ。正直うらやましい。そんな気持ちを抑えて俺は、その子供に尋ねた。


「ねぇ、君? あれはなんて街なの? 俺、ここら辺よくわかんなくて。」


 俺は、優しく子供に聞いてみた。だが俺は次の返事にさらに驚くことになる。


「そんなこともしらずにきたの~? あそこはねーこのくにいちばんのまちのとうきょうだよ!」


 驚く暇もなく、その子は続ける。


「おかあさんがいってたんだけど、ことしで1922ねんなんだって!こないだいっぱいごはんがたべられたんだ~」


 嘘だろ。そんな街聞いたことないぞ。これでも、この世界の街や国,村の名前も結構詳しい方なんだが。しかも1922年!?俺の国が数日後に建国100年祭をやるってのに。

 その返事を聞いた俺は、なにかとんでもないことに巻き込まれていると少し感じ始めた。









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