4 クリスマスイブは天使たちも見ている
幸一 は あれから、エンジェル パウダーの画像を送ったことへの返信が何もなかったので 、お母さんの特性 ハンバーグが晩御飯だった日のことは、自分の 早とちり だと思い始めていた。
でも、サッカーができなくなって、何もすることがないので、今日も 惰性で X を開いた。
すると、画面下のベルのお知らせマークが、エンジェル パウダーの画像を送った分の数だけ、返信が届いていた。早速 開いてみると、
なんかすげえー! エンジェル パウダーだっけ? あの画像を開いてしばらくしたら、喧嘩してた恋人から連絡があった。ありがとな。
あの巾着みたいな画像を開いた次の日に、探しても中々なかった漫画が見つかった。サンキュー、いじけた サッカー少年。
エンジェル パウダーをクリックしてから、競争率が高いコンサートのチケットを取れたよ。ありがとう。
など、みんな 感謝の返信 ポスト ばかりだった。
幸一 はそれらのポストを全て読んだら、なんだか、サッカーでゴールを決めた時みたいに、嬉々として体が軽くなって、タブレットを持って、居間にいた母さんのところに走って行った。
「母さん、見て見て!」
幸一 は満面の笑みで母さんにすり寄るが、母さんは びっくりしたような目で幸一 を見た。
「幸一、あんた、松葉杖は?」
「へっ?」
幸一は松葉杖なしで母さんがいる居間まで行ったことにようやく気づいた。
「えっ、やった! 何もなしで歩けたよ。こんなことって……」
幸一 は 今まで落ち込んでいたことや不機嫌な自分を思い出したが、そんなことよりも、歩けたことがジャンプしたいほど嬉しく、嬉し泣きで涙が出てきた。
「幸一、良かった、本当に良かったわ」
母さんも幸一をぎゅっと抱きしめて、涙を流して喜んだ。
ー☆ー
こちらは エンジェル界。
「大天使さま……」
見習い天使も 大粒の涙を流しながら、幸一が映った大玉 水晶を見ていた。
「こういう仕掛けだったのですか?」
見習い天使は、尊敬の眼差しで大天使を見つめた。
「いや、なに、私はエンジェル パウダーを与えただけじゃよ」
見習い天使は、本当に困っている地上の子どもたちに、こんな 奇跡を何回でも起こしたいと思ったが、それが 安易な方向に流れる心配も考えなければと思った。
でも、今夜はクリスマスイブ。
幸一をはじめ、地上の子どもたちがみんな幸せであるように、空中の神殿がある方を見て、見習い天使はお祈りした。
「大人も幸せにのう!」大天使
星空の X。
ー了ー
読んでいただき、ありがとうございます。
今はこれから夏に向かいますが、クリスマスのお話を載せてみました。
幸一がサッカーができなくてイライラしたり浮かなかったりした心模様は、私も小説を妨害されたりして書けない時期があったので、重ねてみました。
サッカーと小説って全く違うことのようですが、不意な横槍でやめなければならない時の気持ちは同じだなあと思いました。
今どき、小説の妨害なんてあり得ないと思うでしょうが、日本のあるところにはあるのです。
知りたい方はネットなどで調べてみてください。