2 天使たち、人間界に行く
幸一がタブレットの電源を切ろうとしたら、急にタブレットから閃光がすると、1つの動画が出てきた。
幸一は閃光に驚き、しばらくぼーっとしたまま、その動画を見ていた。
その動画には、小学1年生くらいと保育園児くらいの幼い姉妹が出ていた。どうやら、その姉妹のお母さんはガンで亡くなったようだ。
撮影したのは、亡くなったお母さんの姉で、その幼い姉妹の伯母さんのようだった。
幼い姉妹の動画は、クリスマス前なので、お母さんが亡くなってもがんはってるお父さんに、プレゼントを贈ろうというものだった。
2人でプレゼントの相談をしているところが映った。妹はおりがみで鎖を作り、つなぎ合わせて首飾りを、姉はパンケーキを焼いて、ホイップクリームといちごでデコレーションするという小学1年生でも作れそうなものだった。動画はそこで次回へとなっていた。
大人ならば、世の中には、そういう境遇の子どもたちは大勢いると、関心も示さないかも知れないが、幸一は、何だか自分が恥ずかしくなった。
自分は今は松葉杖なしで歩けないけど、お父さんもお母さんもいる。妙に感銘を受けてしまった。
僕もお父さんやお母さんを喜ばせたり、人に喜んでもらいたい。でも、何ができるだろう?
ー☆ー
幸一の部屋に来た大天使と天使見習い。
「幸一よ、良くぞ申した」
「おじいさん、だあれ? 急に現れて、それに羽なんかついているし……もしかして、天使???」
「そうです。僕たちは天使です。こちらにおりますお方は大天使さま、僕は天使見習いです」
「大天使さま???、天使見習い???」
「エンジェル界で、幸一君の憔悴ぶりを見て、いてもたってもいられずに……」
「アニメじゃあるまいし、そんなことあり?」
幸一は目を白黒させた。
「ありじゃよ。神の御子が地上に降り立った日が近いからのう。人間界の大人が言う恩赦のようなものじゃ」
「お言葉ですが大天使さま、恩赦では、幸一君には分かりづらいと思いますが」
「おお、そうじゃった。恩赦とは罪が赦されることじゃが、幸一の場合は苦しみを取り除くというか、何というか……」
「えっ、そんなことできるの?」
「幸一の才覚次第なので詳しくは言えんが、人間界の弥勒、つまり、幸一がしているXで、人を喜ばせなさい。
このエンジェルパウダー画像を親しい人たちに贈って、言葉を添えること。今の幸一にはぴったりで簡単にできることじゃろう」
そう言い残すと、2人の天使は幸一の目の前から急にピタッと消えた。