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 しばらくして、アンナと入れ替わるように先ほどの善三が顔を出す。


「およねさん、また厄介ごとをしょいこんだんやってな」


 善三が呆れた顔をして口を開いた。


「ふんっ、別に好き(この)んでやってるんではないわぃ、なぜか知らんがいつも、厄介ごとが降ってくるんだ」


 その会話を聞くなり、紗綾がおよねに頭を下げた。


「本当にすいません。迷惑かけて」


「いつものことじゃ。気にするでねぇー。それより、さぁ、弁当を食べよう。今、温めてやるからな」


「はい。ありがとうございます」


 およねが電子レンジでひとつひとつ中華弁当をチンしてから、善三にもお茶も淹れようとする。

 とたん、廊下の脇にある炊事場から、なにやらはしゃいだような声が聞こえだしてきた。


「やだぁ~、私には、むりむりむり~。気持ち悪いから、できないってば」


「アンナ、仮にも女の成りをしてるんやから、これぐらいの魚を(さば)けんでどうするんや? そんなことではお嫁に行けへんで」


「だって、私はドラッグクゥィーンよ。料理なんてできなくっても、お嫁に行けるもの」


 大きなしゃくれた顎に手をあて、セクシーな仕草を決め込むアンナ。それを見て聞いて楽しんでいる他の連中達も炊事場に集まっている。


「はっははは」


 楽しげに話している声の主は、魚を釣ってきた寛太。それにアンナ、その他、複数の男女。しかし、その声を耳にした、およねが善三に注意するように呼びかけた。


「善三、何度も言うが、あそこは共同の炊事場じゃ。だから、住人じゃないやつらが大きな声でわいわいやられたら、また大家にチクられてしまうわぇ。ええ加減、わしもここにはおれんようになるでの」


「すまん、すまん。ちょっとあいつらに注意してくるわ」


「そうしておくれ」

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