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ほどなくすると、またしてもアンナが息を切らして駆け込んできた。
「あかあさん! ちょっと大変よ! ヤクザみたいな奴らが大勢、あちらこちらで、この娘を探しまわってるわ。──ちょっと、あなた一体何したの? 厄介ごとを持ち込まないでよ」
男女のアンナは大きな目をパチクリと瞬きしながら、紗綾に視線を注いだ。
「…わ、私は元カレに風俗に売られそうになって……」
それ以上、言葉が出なかった。だが、それをフォローするかのように、およねが言葉を付け足した。
「アンナバネッサ、この娘はなんも悪いことはしておらんわぃ。それに、厄介ごとは、おまえさんも同じじゃろーに」
「はっはは。まあ、そうだけれども。でもおかあさん、この娘をどうするつもり? まさか、かくまってあげるなんて言わないでしょーね?」
鼻声気味な、どこか男の声音のアンナは大きな身ぶり手振りを交えて、興奮ぎみに話す。
「まあ、ほとばりが冷めるまでは預かろうかの」
「また始まった。あいりん名物のおよねさんのお節介が。でもそれで、いつも嫌な思いをするのは、おかあさんよ。──そうよねぇー?」
「今日は、耳、日曜日だ」
「ほらほら、またそうやって誤魔化すんだから。うんっ、もうっ!」
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