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「それでアンナバネッサ、おまえは金欲しさに連絡したのかい?」


「やだ~、みくびらないでくださいな。私が、おかあさんのお客人を売るわけ、ないじゃないですか~」


「ふむ。それなら良い。──あっそうだ、いけない! 善三にもこの娘を見られてしもうた。アンナバネッサ急いで、善三に口止めしてきてくれ!」


「は~い。じゃあ、お弁当とお釣りも一緒にここに置いときますね」


「アンナバネッサ! 寛太が、また魚を釣ってきたらしいから、おそらく公園のテントからこっちに向かってくるはずじゃ」


「かしこまりましたわ。おかあさん」


 玄関戸を勢いよく閉めたアンナは大股歩きで、公園の方へと向かった。

 この時、およねの向かいに座っていた紗綾は、自分がお尋ね者のように扱われていることに、内心気が気ではなかった。


(恵介の奴、そこまでするか! ストーカー以上に(たち)が悪い。早くこの地域から出たいのに、京都に帰りたいのに、今は電車賃も無ければ食べるお金さえない。はあ~情けない。目の前の優しいお婆さんにも、これ以上迷惑はかけれないし……)


 そんな、浮き足だってそわそわしている紗綾を見たおよねは、孫のような年頃の娘を安心させようと喋りかけた。


「紗綾、気にするでない。わしの選んだ人間はみんな気がいい奴らじゃ。皆がおまえを守ってくれるはずじゃ。だから、安心してここに居ときな」


 それを聞くなり、紗綾は目頭を熱くした。さっき会ったばかりのこの老婆に、犯されそうになったところを助けてもらい、今度はかくまってもらおうとしている。それに、シャワーに服にご飯まで……


 恵介とか、さっきの恵介の上司とは、人として雲泥の差がある。人との付き合いがあまり上手くない紗綾。大人になって、初めて会った人間にこんなにも優しくしてもらったことはなかった。


 それゆえに、人の優しさが深く心に染みたのだ。

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