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「はあ~~。やっと帰れた」


 真っ暗な部屋に帰ってきた紗綾は、安堵した深いため息を吐くと、手探りでアロマキャンドルを探しだした。次いで柄の長いライターを手に取りキャンドルに火を(とも)す。


──カチッ、カチッ──


「ついた! でも、外から見たら、明かりが漏れてないかな? ちょっと心配」


 もしも恵介に帰ってきたのを気づかれたら……そう思った紗綾は中腰で吐き出し窓を開け、外からはどのように映るのかを確かめようとする。


「うん。これなら大丈夫ね。遮光カーテンにしといて良かった──あぁ~でも、お腹が空いたなぁ~。さすがに朝からSサイズのポテトだけじゃ体がもたないわ」


 この後、紗綾は空腹に耐えながらシャワーを浴びる。ガスも電気も止まっている。が、水道だけは止められていない。


「ひゃっ! 冷たっ」


 頭が痒い。髪の毛だけは洗っておきたかった。洗っているうちに、だんだんと水の冷たさにも慣れてきた。これが冬でなく春で良かったと心の底から思った。


 今日の昼間、宝くじに当たるまではこの先の人生なんてどうでも良かった。何もかも手につかず、このままどうにでもなれと思っていた。正直、この部屋の中で野垂れ死んでもしかたないと。でももし死ねなかったら、風俗に身を沈めようかとも考えていた。今思えばギリギリの精神状態だった。恵介を訴えるにしても先立つものが必要になってくる。この前まで経営していた会社の負債も残務処理も残っている。この世はすべて金次第。地獄の沙汰も金次第だ。


 短い期間だったが、商売をして紗綾が学んだことはお金の怖さだった。お金は人の心を綺麗にもするし汚くもする。良くもするし悪くもする。紗綾が実際に肌身で感じてきたものは、後者のほうだった。

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