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「はいよ!」
「入っていいか?」
「入りな。今日はどうしたんじゃ?」
「おっ! お客さんか? 珍しい」
「善三、用件をさっさっと言いな」
部屋に入ってきた男の年の頃は50才半ばくらい。薄い髪をオールバックにしている。労働者風の成りをしているが、目力があり威風堂々とした顔立ちは、どこかの企業の社長のようだ。
「あぁ、すまない。ちょっとな包丁を貸してくれへんかなぁと思ってな? 今日は寛太の奴が南港でボラを釣ってきたもんでよー、刺身にして酢味噌で食おうかと思ってな」
「それはええが、炊事場も使うんやったら他の住人にばれないように使いな。お前達はここの住人じゃないんやからな」
「それは、心得ているよ。捌いたら、およねさんのも後で持ってくるからな」
善三はそう言うと、上機嫌な面持ちで、いそいそと出ていった。
この時、紗綾は疑問に思うことがった。鰡って魚は食べれるのだろうかと。それも、あまり綺麗には思えない南港で釣った魚が食べれるなんて、あまり聞いたことがない。そんなことを考えていると、およねが口を開いた。
「おまえさんの名前を聞いていなかったな。言いたくなかったら言わなくてもええが…」
「いえ、大丈夫です。──紗綾といいます」
「そっか、紗綾か。なら、今からはそう呼ぶぞ?」
「はい」
「わしはおよねだ。皆は、およねさんと呼ぶがな」
「じゃあ、私も、およねさんと呼んでもいいですか?」
孫を見るようなは面持ちのおよねがコクりと:頷いた。
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