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一方、ぼろアパートでは、コイン式のシャワーから出てきた紗綾が老婆の部屋で時をやり過ごしていた。
「おばあさん、なにからなにまで、ありがとうございます。本当に助かりました」
「気にすることはない。じゃが、若い娘の下着などは持っておらんからの。それに乳パットはないが、それで辛抱せぇや」
「いえ。こんな新品の下着と服まで着せてもらって……これは、またどこかで購入してお返ししますから」
老婆が紗綾に手渡したものは真っ白な股引きと淡い紫色のチュニックだった。
「別に気にするでねぇ。わしゃが、亡くなったときに着せてもらおうと思って取っとおいたものじゃから」
老婆がそう言いながら紗綾に熱いお茶を淹れる。老婆の優しさに、少し落ち着きを取り戻した紗綾。でも、内心は今後の行く末が心配でしょうがなかった。
(ここは一体どこなんだろう? 京都から車で高速を使って約1時間半くらいなのに、まるで別世界。それに、変な人達にどこかへ連れ行かれた恵介は、一体どうなったんだろう? 早く京都に戻らなくっちゃ。お風呂場の椅子の脚に隠した当たりくじも気になるし。どうしよう?)
そこへ、玄関口の木製の戸からノック音と同時に男の声がした。
「およねさん、おるんか?」
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