3.
「あっ、そうでございますか。それなら失礼あそばせ」
「おいアンナバネッサ、ちょっと待ちな」
「おかあさん、アンナだけでいいですわよ。フルネームで呼ばれるのはちょっと小っ恥ずかしくて…」
「なにが、恥ずかしくてじゃ! わたしゃ、おまえさんの本当の名前を知らん。それに、化けもんの名前なんてどうでもええわい。それより今からどこへ行くんじゃ?」
「あぁ、つけまつ毛を切らしちゃって。近くのコンビニに…」
「ふんっ、まつ毛は生えるもんで、つけるもんではないわぃ。それにお前さんが瞬きする度に風がこっちまできそうじゃ。うっとおしい」
「あらやだ~、それって、時代錯誤なんですけどぉ~」
身長が190センチぐらいはありそうな、男女が、長い人差し指をアゴにあてつぶやいた。
「まあええ、それならおまえさん、帰りにスーパーも寄るのかい?」
「まあ、それでもかまいはしませんけど……お母さん、何か欲しいものでもありますの?」
「ふむ。いつもの弁当を買うてきてくれ?」
「いいですよ。いつもの中華弁当でございますわね」
「そうだ。でも、エビチリとかの辛いやつはだめだ。春巻きとか酢豚とかがあれば、それを頼む。二つな」
「わかりました。じゃあ、お駄賃のかわりに、わたしのもいいかしら?」
身体をくねくねさせておねだりするアンナ。
「半額のんがあればな」
「えーっ!? それはある日と無い日があるのでございますよ」
大柄の女のような男のような者が口を尖らせて不満を漏らす。
「無ければ買わなくてよいわぃ。でも言っとくが、この前みたいに他に貼り付けてある半額のシールを貼り替えたらあかんぞ。あのとき、おまえのせいでわしも警察に呼ばれたんやからな。それに、おまえの身元引き受け人に、なった覚えはねぇからな」
「だって、あのときはお母さんしか、たよる人がいてなかったんですもの」
「おまえが、こすいことをするからじゃ。まあなんでもええけど、二度と警察の前では、わしの名前を口にするでないぞ!」
お読みいただき、ありがとうございます。 少しでも面白いと思っていただけましたら、ブックマークや評価をぜひお願いします。 評価はこのページの下側にある【☆☆☆☆☆】をタップすればできます。




