2.
その建物の中の奥行きがありそうな通路を歩く。陰気なカビ臭さが紗綾の不安を募らせる。縦長の板が並べられた床は、足を置くたびにぎしぎしと音を鳴らす。昼だというのに薄暗い。視線を廊下の上に向けると裸電球が一つだけぶら下がっている。そのまわりを一匹の蠅が忙しなく飛び回っている。
入口中央にある2階に登る赤茶けた鉄の階段を横目に奥へ進むと、大柄な派手な女が前から歩いてきた。
モデルのように一直線上に足を動かす歩き方。腰も大きくくねらせている。よく見るとドラァグクイーンのような出で立ち。髪の毛は赤毛のセミロング。派手な服装。ヒョウ柄のシャツにサテンのようなつやつやと光沢のあるのスパッツを穿いている。鼻の下や、もみあげから顎の下にかけて髭を剃った跡が青く色づいている。でもどう見ても中年の歳の頃。その女性が老婆を見るなり明るく声をかけてきた。
「あら、おかあさん、ごきげんよう」
「おまえみたいな訳のわからん子を産んだ覚えはないね。それになにが、ごきげんようだ。機嫌はいつも良くないに決まってるだろ」
「またぁ~、今日は一段と剣があること。──おや!? その娘は?」
「ふん、なんでもない。おまえには関係ねえ!」
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