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「えっ! 宝くじ!? なんの話ですか?」
即座に惚けた恵介。どうしてこいつらが宝くじの存在を知っているのか、理解に苦しんだ。
「あと5秒だけ待ってやる」
だが、男達は恵介の心中などうでも良かった。待ったなしの状態。サバイバルナイフの刃先を恵介の親指にあてた。よく研がれているのか、切れ味がよさそうな刃物。刃があたったところの薄皮が切れ、わずかな鮮血が親指の付け根のぷくっと膨らんだ皮膚をつたい滴り落ちた。
そうして、男は無表情のまま、なんのためらいもなく数をかぞえだした。恵介に考える暇を与えなかったのだ。
「ご・よん・さ~ん・にぃ~・い~ち」
「ちょっと待ってくれ! 言う、言うから切らんといてくれ。頼む!」
男は、親指の薄皮に刃をとどめた状態で恵介の顔を見据えた。
「それで、どこにあるんや?」
「くっ……あの当たりくじは、さっき一緒にいた女が今朝方、引ったくりにあって…その時に盗まれたんや」
「嘘をつくな! ──はい終了。おまえの与太話に付き合ってる暇はないわ」
そう言うと男は、もう一人の部下のような男に指示をだす。
「おい、こいつの手をしっかり持っといてくれ」
「はいっ」
男は、後ろから羽交い締めするように恵介の手の自由を奪う。
そして、男が本気で親指を切り落とそうとした時だった。
「マジなんや! ほんまに、あの当たりくじは盗まれたんやって。せやから、あの女に責任を取らせようと思って飛田に連れてきたんや。ほんまに信じてくれ。あの女は、警察にも被害届を出したって言うてるし。なんやったら、そっちの方面から調べてくれたらええし。俺は、あの二等の当たりくじを見たことも触ったこともないんや」
自分が嘘をついてないことを必死でアピールする。早口で喋る恵介の表情は崩れ、涙と鼻水が溢れでいた。
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