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 表向きは料亭。けれど実際のところは売春宿。そんな町屋風の建物が並ぶ飛田新地を駆け抜けると、先程、紗綾がカルチャーショックを受けた、あいりん地区へと入っていく。


 目つきの悪い男達の視線が気にかかる。紗綾は気にせす、ただただ駆け抜ける。絶対に恵介に捕まる訳にはいかない。しかし、こんなとき紗綾の足首から悲鳴があがる。


(いたたっ、痛っ! めっちゃ痛くなってきた。ヤバい、もうちょっと私の足、頑張って)


 足を引きづりだした紗綾は、捻挫した右足首をかばうように、けんけんするような状態で飛び跳ねて走りだす。


 明らかにスピードが落ちた。恵介が間近に迫ってきている。後ろからは、革の靴底がアスファルトを叩く硬そうな音が近づいてくる。


──コツ、コツ、コツ、コツ、コツ──


 後ろを振り返る余裕などない。足を引きづって走るのが精一杯。けれど、その足音が容赦なく近づいてくる。


 次の瞬間、後ろから肩を引っ張られるようにしてつかまれた。


「はあ~、はあ~」と、息を切らす男の嫌な声が聞こえてくる。


「おまえ、ええ加減にさらせよ! はあ~はあ~はあ~」


 息を整えようとする恵介は、後ろから紗綾の肩を強くつかんだままグイッと自分の方へと手繰(たぐ)り寄せた。


 そのはずみで、バランスを失い地面に倒れ込んだ紗綾。悔し涙を浮かべ、顔をしかめて足首を押さえた。

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