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飛田遊廓。そこは、大阪の西成区の一角に存在した遊廓。大正時代に築かれた日本最大級の遊廓と云われていた。現在でも、ちょんの間が存在し、通称飛田新地と呼ばれる歓楽街だ。
この歓楽街、表向きは料亭という「料理屋」の形態を取っている。 というのも、1958年に「売春防止法」という法律が成立し、表立って風俗店を名乗る事ができなくなったからだ。
というわけで、料理屋に入った男性が、そこの女性スタッフと恋に落ち、身体を重ね合わせるという設定になっている。あくまでも自由恋愛なのだ。
そんな、歓楽街の近くには古くからある新開筋商店街が未だに健在している。昭和の香りが漂うレトロな雰囲気だ。が、裏を返せばレトロなというような情緒的な表現では言い表しにくく、はっきり言うと、今にも潰れそうなボロボロの商店街だ。
シャッターが閉まっている店も多いのだが、昼間から開いているスナックや飲み屋などがあり、ぽつりぽつりと明かりを灯している。
時折、シャッターや壁には立小便の跡もままにある。全体的に小便臭い。それもそのはず、飛田新地へ行く道は西成の『あいりん地区』を通らなければならないのだ。
半ば強引にスカウト会社のマネージャー的存在であるタクの車に乗せられた紗綾は、恵介と一緒に例の店へと向かっていた。この二人の男に監視され逃げられなかったのだ。
絶望感一杯の心持ちの紗綾は、ふと走っている車窓から外を眺めた。そこには、プルーシートや段ボールに覆われた小屋のような小さな建物がいくつも、ところ狭しと並んでいる。高齢者の貧困層や日雇い人夫であろう労働者達が混在し、刑務所帰りのような人相の悪い男達もうろついていた。道端には、人が横たわっていたり、項垂れるように座っていたりと、おそらくホームレスの溜まり場でもあるようだ。
この一角は日本ではない。まるでどこかの国のスラム街のよう。後部座席の窓越から眺める光景にカルチャーショックを受けた紗綾は、より一層、不安と恐怖を募らせた。
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