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飛田遊郭 ~胡蝶風月~

「それならタクさん、その店でこいつを働かせてやってくださいよ」


「まあ待て待て、そうあわてるな。さっきも言うたけど、この()の親から連絡がかかってきたらどうするんや? いきなり消えることになるんやで。そらぁ、親御さんらも心配するやろ? 下手したら警察に捜索願いだすかもしれへんしな」


「多分、それは大丈夫っすわ。こいつ、親ともあんまり連絡とってないみたいやし。それに友達なんていてませんから。せやから、急にこいつが消えたからって、誰も探しませんわ」


 図星だった。確かに親とも連絡は取り合ってはいない。友達と呼べる人もいない。泣いていた紗綾は耳を塞ぎたかった。でも、これから彼らがしようとすることを容易には受け止められなかった。


「まあ、それでもこういうことは、念には念を入れとかなあかんのんや。お前も手を後ろにまわされたないやろ?」


「はあ~、そうですね」


 邪悪な話が一段落したようだ。この一連の会話を聞き終わった紗綾は一瞬にして涙腺(るいせん)()き止めた。同時に、すぐに自身の運命を悲観するのも止めた。自然と目が点になり、顔からずんずんと血の気が引いていく。そして、強張(こわば)った身体を小さく震わせた。本当に恐ろしかったのだ。

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