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「タクさん、別にこいつの意見なんかどうでもええんですわ」


 恵介は紗綾の方を振り向きもせずに、タクと呼ぶ男と目を合わせ続けている。


「そりゃ、いくらなんでもあかんやろ恵介。─なっ、お嬢さん? 誰でも強要はされたないわな?」


 この男の言葉を聞くなり先程までのざらついた気持ちが少しだけ(やわ)らいだ。同時に自然と涙が溢れでた。急に暗雲がたちこめた状況に一寸の光が射し込んだ気がしたのだ。

 

 この男、恵介とは違い少しは優しさがあるのかもしれない。そう思った紗綾は、思いきって本当のことを話そうとした。でも、宝くじのことは口が避けても言えない。お金の怖さは知っている。言えばどうなるかも…。


 やっぱり言えない。言葉が喉に引っ掛かった。男の問いかけに、紗綾はすでに涙が溢れ出ている瞳をぎゅっと閉じながら、首を縦に振ることしかできなかった。


 その時だった。またしても険のある耳障りな声音が紗綾の耳に突き刺さった。


「おまえ何、泣いとんねん。面倒臭いのぉー。お前は俺にどえらい金額の損害与えたんやぞ。今さら被害者面すんな。ボケが」


「おいおい恵介、どんなことがあったか知らんけど、おまえの言う買い取りは無理やな。本人も嫌がってるし。それにこの()の親御さんもまだおるんやろ? そんな娘、売り飛ばしたら、即効、捕まるで。──まあせやけどな、こういうケースには、うってつけの店があるんや」


 ついさっきまで、目の前の男が近所の優しいお兄ちゃんのように見えた。だが、男のどす黒い顔つきを()の当たりにした紗綾は、それがすぐに杞憂だったとことに気づく。

 

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