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そんな二人の会話は、紗綾には聞こえていなかった。ただ、ちらちらとこちらを見ながら話している二人に、どうせまた良からぬことを話しているのだろうということだけはわかった。
「じゃあな、また今度、飯でも食いに行こか?」
「そうっすね、恵さん、また行きましょう」
男は、すました顔で紗綾の方へと歩を進め、間近に来ると目線を下から上へと動かした。まるで商品を見定めるかのよう。そしてそのまま過ぎ去った。
とたん、またしても恵介のどなり声が紗綾の耳に障る。
「早よ来いや!」
無言で足を引きづりながら歩く紗綾。身の回りの物が入っている小さめのスーツケースを杖にがわりにしている。
血も涙もない男。私の足が捻挫しているのを知っているはずなのに、まるで奴隷のような扱い。絶対に許せない。私を売り飛ばそうとしてるのは目に見えている。さっき京都を出る前は、地獄だろうが風俗だろうがと思っていたけれど、いざここまでくると、心の中は葛藤で一杯。
(どうしよう、今は情けないけどお金がまったくない。このままでは恵介のいいようにされてしまう。でも、換金まで後13日。──そうだっ! 手続きがスタートするのは6日後。当たりくじを銀行に持っていったとき、銀行からお金を借りれないかしら…50億もの担保があるんだから、おそらく借りれるはず。もしそうなら、後6日の辛抱よ。それまでに身分証明書の再発行と印鑑を買うお金だけは作らないと。それに京都まで帰る交通費も。しょうがない悔しいけど、今は我慢するしか…)
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