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そこへ、若い男が恵介に声をかけてきた。
「あっ、恵さん、お久しぶりっす。今から事務所っすか?」
ジーンズをわざとずらし、腰からはジャラジャラといくつもの鍵をぶら下げている。金色の髪は肩まで伸びているロン毛。明らかにサラリーマンではなさそうだ。
「おぉ、久しぶり~」
「事務所っすか?」
「そうなんや。ちょっと女の子をな…」
若い男はちらっと紗綾の方へ視線を向けた。
「おお! 恵さん、あの娘やったらAランクでいけるんとちゃいます?」
「いけるかー? そんな大して可愛いないで」
「いやぁ~いけます、いけます。鼻筋も通ってるし、目も大きいですやん。それにスタイルもええし。シェットランドやったら、可愛い系が好きな客、多いから間違いなく15%で、受けてくれますって」
シェットランドとは、警察に届けを出していない秘密の高級デートクラブ。もちろん本番もある。15%とは、スカウトマンの取り分の割合。コンパニオンの給料の15%が店の売上げから支払われる。因みに、Cランク以下なら10パーセント。それ以下ならもっと低い数字となるようだ。
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