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 紗綾は父親に感謝しつつ、先程まで恵介に殺意を抱いていた気持ちを押し止めた。


(しょうがない。今はこいつに従ったふりを見せとくしか。今ここで警察に捕まるわけにはいかない。それにどんな仕事だろうと、ご飯は食べれる。身分証明書の再発行や印鑑も購入しないと。それに早くスマホもつなげなければ。身体を売るのはすごく嫌だけど、あと13日だけの辛抱よ)


 追い詰められた紗綾は、腹をくくらざる得なかった。


 その後、当たりくじを椅子の脚の中に隠した不安な思い引きずったまま、マンションの鍵をしっかりと閉めた。


 高速道路をつかい向かった先は、大阪のミナミの繁華街である心斎橋。


 約一時間後、雑居ビルの横の駐車場に車を停めた恵介が命令口調で口を開いた。


「着いたぞ。さあ降りろ!」


「……」


 恵介にうんざりしている紗綾は、もう投げやりだった。でも今は死にたいとまでは思わない。

(もうこうなったら、風俗だろうが地獄だろうがひたすら13日間、我慢して乗りきってやる)


 そのような心持ちで恵介の後に続く紗綾。恵介は足早に飲食店や水商売の店が並ぶ繁華街の中を歩いていく。だが、二人の距離が徐々に開いていく。

 自分の後に続く紗綾の気配が薄れたことに気づいた恵介は、後ろを振り向き声を張り上げた。


「おい、何してるんや。早よ来いや!」


 足を引きづりながら歩く紗綾はとうてい早足の圭介には、ついていくことができないでいた。


「チッ、面倒臭い奴」


 舌を鳴らした恵介はその場で足を止めた。

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