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「まあ、ついてきたらわかるわ。──よし、これでええわ。あと靴下を履いたら剥がれへんやろ」


 恵介はなにくわぬ顔で、湿布を貼ったばかりの紗綾の足首をポンポンと叩いた。


「いたっ!」


「あっ、すまん、すまん、痛かったか?」


「いえ、大丈夫です」


「じゃあ、そろそろ行こか。近くの百円パーキングに停まったあるカーシェアリングのレンタカーを予約できたし」


「えっ!? どこに行くつもりですか?」


「大阪や」


 先程からのとてつもなく嫌な予感が的中しつつある。


(おそらく極悪非道な恵介のことだ、私をどこかに売り飛ばそうとしてるのだろ。どうして、こんな奴の言いなりなんかにならなあかんのんやろ? もういっそのこと万引きで捕まった方がマシかもしへんわ)


 そう思った矢先、とうとう紗綾の堪忍袋の緒がぶち切れた。


「ちょっと、大阪って! あんたいい加減にしなさいよ! 人が下手(したて)に出てたらどんどん調子ぶっこきやがって! なんで私があんたの言うことなんか聞かなあかんのや!」


「じゃあ、ええんやな。警察に言うても」


「いいわよ。好きにしなさいよ。あんたみたいなブタ野郎にいつまでも付き合ってられないわよ」


「ふっ、まあ警察にはいつでも言えるけど。それより紗綾、一緒に購入した宝くじを盗まれた責任はどうするつもりや? おぉ!」


「そんなこと、泥棒に言いなさいよ! 私が好きで盗まれたんとちゃうし」


「まだ、わかってないようやな。たぶん、もう盗まれた宝くじは戻ってこえへんやろーな。せやから、俺が民事で損害賠償の裁判を起こしたらどうなると思う。俺がお前を信用して預けておいた宝くじを簡単に盗まれたんやからな。それ相応の責任ちゅうもんがでてくるんやで」


 残念なことに、この時の紗綾は恵介の訳のわからない理屈の意味がよくわからなかった。もしかしたら恵介の言うことが法的に通るのかも知れないと、思ってしまったのだ。


(どうしよう。私が逆に訴えられたら……それに、警察につき出されたら、犯罪者になった私が不利になるかもしれないし…)


 無知とは恐ろしいものだ。この(のち)、またもや紗綾は恵介のペースにのまれることになる。

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