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 恵介が紗綾の目の前に置いたのはA4用紙とボールペンだった。


「わかるやろ? ──当たりくじの権利、俺にも半分あるんやから、それを書面で残して欲しいんや。まあ、見つからへんかったら、こんな紙はなんの意味もないけどな…」


「………」


「ほら、早くボールペン持って」


「ちょっと、待ってください。あれは、手切れ金だと言ってましたよね」


「だから、そんなこと俺は知らんがな。おまえが勝手に言うてるだけやろ」


「いやーそれはいくらなんでも、ないんとちゃいますか?」


「ふぅーん。まだ、お前は自分の立場をわかってないみたいやな」


 恵介がそう言うと、明太子フランスのパンを紗綾のカバンから取り出した。


「な、なんですか?」


「警察に行きたいんか? あっそうや、お前がした犯罪、他にも思い出したんやけど……大阪のビジネス街のサラリーマン100人に聞きましたって仕事を請けたことあるやろ。そのとき、おまえAIを使ってアンケート書いてたよな」


「それは、あんたが、いや恵介様がそうした方が効率がいいと言ってたじゃないですか?」


「確かに効率がええと言ったかも知れんけど、そんなインチキなことをせぇーとは一言も()うてへんぞ。そこんとこ、勘違いするなよ」


「………」


(こいつは、とことんブタ野郎だ。絶対にいつかミンチにしてやる!)


「なあ、紗綾。俺があのとき宝くじを買いに行こうって()えへんかったら、二等も当たってへんかってんぞ。せやから、半分は俺が貰っても問題ないはずや。なっ、お前もそう思うやろ?」


「……」


 不気味な笑みを浮かべた恵介は、その後も話を続ける。その後は高圧的な態度で紗綾を睨みつけながら口調を荒げた。


「おい紗綾! お前、今から警察に行くんか! それとも俺の言うことを聞くんか! どっちやねん!? はっきりせぇーや!!」

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