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(やばい。──ああ、神様、どうか見つかりませんように。パパ、この当たりくじを見守って。お願い!)
そう願いを込めながら、紗綾は椅子を裏向けた。
「これで、いいですか?」
「おう。じゃあ次は服を全部、脱げや」
「………」
(しつこい男。まじで、なんでこんな奴と付き合ってしまったんやろ。きっと、自分がずる賢いことばかり考えるから相手を信用できないんだわ。でも私って、つくづく男を見る目がない。今回ばかりは、まじで自分に嫌気がさす)
そんなことを考えつつ、トレーナーとスキニージーンズを脱ぐ紗綾。そうしてから、なんの恥じらいも見せずに、たんたんとブラジャーとパンツも床に落とした。
それを見た恵介は得心したようにつぶやく。
「そうか。ほんまに、なんもあらへんな。まじで盗まれてんな」
「はい。盗まれました。申し訳ございませんでした」
その紗綾の返答は、AIが喋っているよう。まったく感情の起伏が言葉に表れてはいなかった。
「まあええわ」
そう言うと、恵介は風呂から出て折戸を閉めた。
「はぁ~」
(良かった。マジで生きた心地がしぃひんかったわ。ああ、でもほんまお腹、空いたなぁ~。空き過ぎたらお腹も鳴らへんようになってるし。それにお腹が空き過ぎて、なんだか気持ち悪くなってきた。──とりあえず、怪しまれへんようにシャワーだけは浴びよう)
今はあーだこーだ言っている場合ではない。恵介の脅しをなんとかしなければ。そう考えつつ、冷水に身体を震わせシャワーを浴びた。
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