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あまりにも唐突に扉が開いたものだから、紗綾は座ったまま上半身だけ飛びのいた。同時に心臓も口から出そうなぐらい飛び跳ねた。
「おまえ、なにそんなに驚いてんねん?」
「えっ、あ、そ、それは、いきなり扉が開いたもんだから」
「で、なんで椅子の脚を大事そうに持ってるんや?」
「あぁ、今、起き上がろうとして掴んでただけなんです。さ、さっき引ったくり犯に後ろから押されたとき、足をくじいたんで」
挙動不審な紗綾は、おどおどしながら言い訳を探してまくった。
「ん? どれ……ほんまやな。足首が赤ぅなってるな。それで、さっきのポンッていう音はなんやったんや?」
「そ、それはさっき……そう、この歯磨き粉のキャップを開けたときに音がしたかもです」
「ふぅ~ん。なんか、あやしいな。ちょっと、そこの排水口の蓋を開けてみろ」
「はい。この蓋ですか?」
「そうや」
紗綾は座ったまま、排水口の蓋を開けて恵介に見せた。
風呂の中に入る恵介。排水口をまじまじと見入る。と、ふと、おでこを壁に擦りつけ視線を落として鏡の裏を覗きこんだ。
「うん。ここもなんも、あらへんな」
(ふぅ~、良かった。そこに隠さなくて)
「恵介様、どうしたんですか?」
「いや、おまえが当たりくじをどっかに隠してへんかと思ってな……。紗綾、そのパンストはなんや?」
恵介が、洗い場の床に無造作に置かれていたパンストを指さした。
変な汗が胸元をつたう。頭をフル回転させる紗綾。どうでもよい言葉を並べたて、その間に言い訳を探し出そうとする。
「あぁ、これですか。これはですねー、これは、えっと、そうですね。身体を洗うときにタオル代わりに使ってるんです」
「ほぉ~、じゃあその椅子の裏を見せてみろ」
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