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紗綾の部屋にある風呂とトイレはセパレートタイプ。脱衣場に向かった紗綾。その後から恵介もついてきた。
(なんで、ついてくんのよ! 仕方ない。とりあえず服を着たままお風呂に入ろう)
そう思いつつ風呂の折戸を開けると、真後ろから恵介の声がする。
「おまえ、服を着たまま風呂に入るのか?」
「え、えぇ。さっきひったくりにあったとき、転んだから服も一緒に洗おうと思って」
「そうかっ! 電気が止まってて洗濯機も使えへんもんな」
「そ、そうなのよ」
「わかった。早く済ませろよ」
「はい、かしこまりました。恵介様」
メイド口調の紗綾の言葉を聞き、恵介はふたたび勝ち誇った顔を見せた。
(はあ~。良かった。なんとか切り抜けた。さあ、この宝くじをどこに隠そう……そうだ! 鏡と壁の間に5ミリほどの隙間があるわ。ここに隠せないかしら。あっ、いやでも、シャワーを壁にあてたら流れる落ちてくる可能性も… )
紗綾は目一杯、頭を働かせた。そしてついに、格好の隠し場所を見つけた。
生前、父が使用していたお風呂場で使う介護用の椅子。実家から持ってきたものだ。この椅子は高さを調整できる上、とても座りやすかった。紗綾のお気に入り。それに大好きな父親が使っていたもの。嫌ではなかった。
その椅子の脚はパイプでできている。その足元には滑り止めのようなゴムのキャップがつけられていた。泥棒に入られとき、この足元のキャップが外されていた。それを紗綾が元の位置に嵌め直したのだ。
すかさず紗綾はそのゴムを引っこ抜こうとする。
次の瞬間、ポンッと大きな音がするやいなやゴムが抜けた。
(ここなら、たぶん大丈夫だわ)
手早く、お腹に巻き付けていたストッキングを解き、当たりくじの入ったチャック付きのピニールを取り出した。次いで、それを縦に丸めて椅子の脚のパイプに入れ込んだ。そうしてから、素早くキャップをつけようとする。
だが、このときだった。いきなり折戸が開いた。
──バンッ! ──
「おい! 今なんか変な音、しぃひんかったか? ──ん? おまえ何してるんや?」
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