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 それから……。


 年が明け瞬く間に月日が流れた。


 翌年の春、桜の(ほころ)びのように紗綾の気持ちも穏やかだった。


 もうすぐ産まれてくる赤ちゃん。医者からは双子だと聞いていた。それも夫婦子(めおとご)。昔から男と女の双子が産まれるとその家が繁栄すると云われている。


 そのような、おめでたい赤ちゃんが、もうすぐ産まれようとしていた。


 大阪にある産婦人科クリニックの分娩控室では、善三が紗綾の背中をさすっていた。


「大丈夫か?」


「うん、大丈夫。でも善三さん、もしも嫌だったら無理しなくてもいいよ」


「わしは大丈夫や。紗綾ちゃんと一緒にいてるから、いや、わしらの子どもが産まれる瞬間をこの眼でしっかりと焼きつけときたいんや」


「あっ! やっ! 破水したかも…」


「よっしゃ、よっしゃ、ボタンを押すわ。これですぐに来てくれるからな、大丈夫、大丈夫」


 間もなくして、看護士が控室に入ってきた。すぐのちに紗綾と善三は分娩室に誘導される。


 分娩室の隣にある待合室では、およねとアンナ、香織、智明、寛太、幸司夫妻、高槻夫妻のゴリ男と多栄子とその子供が、今か今かと、自分の身内ごとかのように息を呑んで待っていた。


 約1時間後、先にお兄ちゃんの赤ん坊が産まれ、続けざまに妹が。驚くほど超安産だった。元気な産声(うぶごえ)が聞こえてくる。


 ひたすら痛みをこらえ疲れたのだろう。ベッドの上でぐったりしている紗綾。でも顔はどこか安堵しているよう。片や、善三の喜びは大きく、(たま)のような赤子らを見て目を輝かせた。そして、幼妻である紗綾をいたわった。


「よく頑張ったな、ほんまありがとうな、すごい可愛い赤ちゃん、産んでくれて」


 声が震え感無量になった善三の目の縁が赤くなっている。そんなとき、看護士が先に洗い終えた男の子を紗綾の胸の上に優しくのせた。


「じゃあ、お母さん、抱っこしてあげてください。可愛い男の子ですよ」


 ほどなくして、もう1人の看護士も女の赤ん坊を洗い終えるなり紗綾の胸へのせようとする。

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