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「そう…」


「紗綾、これ覚えてるにゃんか?」


 はたと昔を思い出したミケは紗綾にとても小さな貝殻を見せた。


「あっそれ! 昔、私がミケの首輪に付けたやつ」


「そうにゃんよ、これは俺の大切な宝物にゃんよ」


「そう、まだ持っててくれたのね。なんか嬉しい~」


 感動のあまり目に涙を浮かべた紗綾は、ミケの頭をわしゃわしゃと撫でる素振りをみせた。


「これは、ずっと大事に持ってるにゃん」


「でも、霊体なのに、よく持つことができるのね」


「あぁ、これは俺の記憶の想念から映してだした幻影、本物はある場所に隠くしてあるにゃん」


「へー、そうなのね」


「オッケーにゃん。とにかく、俺がこの世界に戻ってくるまで、ちゃんとしとくにゃんよ」


「わかったわよ。──しつこいオス猫は嫌われるわよ」


「じゃあな」


「えっ!?」


 とたん、一瞬でミケが消えた。


(そんないきなり、消えるなんて。ほんと、ミケはいっつもせっかちなんだから。あぁ、ちょっと寂しくなるな……でも、これはこれで、千載一遇のチャンスかも。あの小姑(こじゅうと)みたいなミケが当分いないんだから、これは…ウシシシ)


 この時、紗綾は、昨日ジョンソン夫妻からオファーがあったことを思い出す。ジョンソンは、大阪のコンレットベルヴューホテルから航路で繋ぐ『和み宿』をえらく気に入っていた。というわけで、東京とハワイにあるコンレットベルヴューホテルにも、和み宿のような分店を作れないかという頼みだった。


 その申し出を快く承諾した紗綾は、出産後、落ち着いてからという条件で、アンナと共に東京とハワイに赴くことになったようだ。


 もちろん、善三も一緒に新婚旅行を兼ねてのことだった。


 その時に、紗綾は今までミケの目を気にして遠慮がちだったショッピングやエステなどを存分に楽しもうと考えていた。


 さらに、かねてから欲しかったイタリアのスーパーカー、真っ赤なフェラーリを購入しようと考えていた。


(もうこの際だから、あの一年待ちのフェラーリを予約しとこうっと。一目惚れしたのよねぇ、あの流れるようなボディのフォルムが美し過ぎるわ~。きっと街中を走らせたらめっちゃ目立ちそう~、前の会社の同僚達にもさりげなく見せびらかしに行こうっと。ムチャ羨ましがる顔が目に浮かぶわ~。多分、車は経費で落ちるし、ミケが帰ってきたら、会社でいるもんだったからと言って誤魔化そうっと……。それと、前から欲しかったバーキンのバッグを2つ予約しておこぉっと。それに、ヴィトンの新作のバッグとカルティエの腕時計とかも…ああ、さすがにバッグとかは経費では無理か……でも、欲しいものがいっぱいありすぎて…とりあえず、産まれてくる赤ちゃんを外に連れ出せるようになってからの話だから、現地に行ってから考えてようっと)

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