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一足先に席に戻った香織と善三は、再び天ざる蕎麦を食べようとしていた。ほどなくして、香織がテーブルの上に置かれた紗綾のスマホに気がついた。
(あれ? おかしいわね、さっき友達と電話で喋ってたって言ってたのに…もしかして、もう1台スマホを持ってるのかな?)
「お父さん、紗綾ちゃんって、携帯電話いくつ持ってるの?」
「確か、今は1台だけやったと思うけど。それがどうかしたんか?」
そんなとき、香織のスマホの着信音が鳴りだした。
「はい、芹沢です。──えっ!? なんですって! ふむふむ……うん、うん……そう、わかりました、社長と副社長には私から伝えときますから……はい、はい、じゃあ、すぐに送ってください。あっ、それと警察にも連絡お願いします」
副社長とは善三のこと。警備責任者からの電話を切った香織は、とにかくあせっていた。
「ちょっとお父さん、大変よ。正面玄関に変な人達が集まってるみたいなのよ」
「ん? 変な人達?」
「そうよ、よくわからないんだけど、今、私のスマホにその映像を送ってもらってるから」
スマホを操作する香織は、善三の隣に行き一緒に画面を注視しようとする。
不審な人物を映しだすカメラは、上空をひらひらと舞っている一反木綿の先のドローンから。ドローンが、一反木綿を釣糸で引っ張っている。
数十秒後、スマホの画面に映しだされたのは、バイクに乗った複数のフルフェイスヘルメット姿の男達だった。その男達が小型マシンガンのような銃器で警備帽を被った河童と塗り壁、小豆洗いを撃っていた。
さいわい、妖怪に仮装した警備員達は、痛がりはしているものの、その場で血を流して倒れていることはなかった。おそらく、エアーガンのようなものだろう。
そう思った善三は、すぐさま正面玄関へと駆け出した。
「ちょっとお父さん、警察が来るまで…」
香織の言葉は最後まで届かない。善三の行動は早く、もう蕎麦屋の引戸を開けていた。
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