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すると、後ろからお爺さんの連れ合いのお婆さんも表にでてきた。このお婆さんも昔話の絵本から出てきたような出で立ち。
「そうそう、ほらほらあそこにも、あんたらのスタッフらと写真を撮っとる若い娘らがおるじゃろ。あそこにおる娘らが『ばえー、ばえー』って騒いどるやろーに」
「フッフフ、あ~、あれは、SNSでアップする写真を撮るときに使う流行りの掛け声みたいなもんなんですよ」
お爺さんとお婆さんは、よくわからないといった風に互いに顔を見合わせた。
「はて、なんのことだか…」
そこへ、すぐさまコンシェルジュの香織がフォローに入る。
「お父さん、お母さん、どこか旅行に行ったとき、添乗員さんに写真を撮ってもらったことってありましたか?」
「ふむ、それは、前にあったけど…」
「そのときに、添乗員さんがカメラのシャッターを押す時、『いちたすいちはにぃ』とか言ってみんなを笑わせてませんでしたか?」
「あ~、あった、あった、面白い添乗員さんやってのぉ、あれは老人会で城崎温泉に行ったときじゃて? のお、婆さん?」
「そうそう、そんなこともあったなぁ~」
「そうですよね。その『いちたすいちはにぃ』みたいなかけ声が若い人達の間では『バエー』なんですよ。それが今、都会の人達に流行ってるんです」
「おぉ、そういことでしたか、ハッハハ…わたしゃてっきり、大量のハエが発生したと思って、さっきお爺さんに蝿取りテープを家まで取りに帰らなあかんって言うてたとこやったんじゃ」
「ハッハハ、そうなんですね。──それじゃあ、他にも何かわからないこととか困ったことがあれば、どのスタッフでもいいので声をかけてくださいね」
お爺さんとお婆さんに挨拶をした後、3人は蕎麦屋へと向かい出す。
「さすが香織さん、接客業のお手本みたい」
「紗綾ちゃん、私を誉めてもなんにも出ないわよ」
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