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「おい! とっとっとそこのケーブルを片付けろ! ──だから、もたもたすんなって、オッサンも昔はこの仕事をやっとたんやろ! ほんまつかいもんになれへんやっちゃな。ったく、こんなオッサンを俺に押し付けやがって…あとでチーフに文句いうとかなあかんわ」
若い作業員が高齢男性に罵詈雑言を浴びせている。罵られている方の高齢男性はペコペコと頭を下げ、老体に鞭打って必死に体を動かしているようだった。
「あいつや!」
ぼつりと善三がつぶやいた。
「あいつって誰のこと?」
「証拠はないが、おそらくあの爆発を主導した奴や」
「えっ!? マジで!!」
今現在、善三の目に映っていたのは、宝くじの当たり番号抽出する機械メーカーの社長の菅沼だった。実際に爆弾で紗綾と善三を殺害しようしたのは尾崎と闇の業者である藤木だったのだが、善三は会社のトップである目の前の年寄りが先導したと思い込んでいた。
ぶん殴ってやろうかと意気込んだ善三は車から降りようとする。それを察した紗綾が止めに入った。
「ちょっと善三さん、もぅほっときよ」
「大丈夫や、ちょっと挨拶してくるだけやから」
菅沼の近くまで来た善三。今も若い作業員がしつこく菅沼を罵倒し続けている。
そんなとき、菅沼が後ろにいる人の気配に気づいた。ふり向くとそこには、仁王立ちしている男が立っていた。どこかで会ったことのあるような顔。少しの間をおいて、はっと菅沼が思いだした。
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