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◇ ◇ ◇ ◇


 二年後の10月31日大安、ハロウィンの日でもあった。


 水色の空の端から端まで綿菓子のようなまっ白い線を描いている飛行機。


 その空の下では、田舎道を高級SUV車が疾駆して駆けている。車の中にいるのは身なりの良い男女。運転席には、高級スーツを身に纏った善三と、助手席には真珠のネックレスとイヤリングを付けシックにグレーのスーツを着こなしている紗綾。車中では、なにやら2人が憂いを帯びた表情で話し合っている。


「善三さん、香織さんに何て言うの?」


「そうやな…それを言うたら多分、わしまた怒られるかもしれへんわ」


「そうね。じゃあいいわ、私から報告しとくから」


「せやな、紗綾ちゃんから言うてくれる方が香織も素直に受け止めてくれるかもしれへんし、すまんな。それより紗綾ちゃん、体調はどうや? もしあれやったら、どっかで

停めてちょっと休もうか?」


「ぅううん、なんとか大丈夫、今は《《つわり》》もちょっと収まってきたし、このまま『(なご)宿(じゅく)』まで走ってくれたら」


「オッケー」


 なんとこのとき紗綾はお腹に子を宿していたせいで、つわりが始まっていた。そのお相手とは驚くなかれ、親子ほど年の離れた善三だった。どうしてこうなったのかは定かではないが、2人は総合温泉リゾート施設として開発していた、『和み宿』の竣工式と、その後に行われるプレオープンに赴こうとしていたのだ。


 ここは南丹市の鶴ヶ峰地域。周りが田んぼと山と河だけの道を制限速度で車を走らせている善三は、途中にある広場に長い間駐車している異動基地局車の前で突然、車を停めた。その車のまわりで作業している1人の男に気づいてのことだった。


 移動基地局車とは、携帯電話の地上基地局と同様の機能を搭載した自動車だ。基地局(アンテナ)のない場所、作れない場所に一時的に基地局機能を提供する目的で作られた車。おもに、災害発生時に被災地などで活躍している働く車だ。


 およそ2年前まで圏外だったこの地域には、すでに山の中腹あたりに基地局(アンテナ)が何ヵ所か設置され、移動基地局車はお役後免となっていた。その移動基地局車を他の場所へ移そうと車の外で作業をしている男を見て善三が車を停めたのだった。


「どうしたん?」


 急に車を停めた善三に紗綾が問いかけた。


「いやな、ちょっと見たことがある奴がおって…」


 善三がそう言うと、助手席側の窓をスライドさせた。車の窓ガラスが下りたとたん、作業員同士のやりとりが聞こえだしてきた。

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