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「ほな、徳ちゃんと広瀬はん、こっちに来てや」
次におよねが呼び寄せたのは、背の高い徳田という70ばかりの男性と、中肉中背の広瀬という中年男だった。2人が紗綾の目の前に来ると、およねが紗綾に言いつけた。
「紗綾、挨拶しな」
「あっはい、二条です。はじめまして」
互いにお辞儀をし、貫禄のある2人の男性に握手を求められるまま、紗綾は小さな手を差し出した。
「こちらこそ初めまして、この度はおめでとうございます」「おめでとうさん、これからはよろしくな」
先に広瀬が紗綾の手を熱く握りしめ、その後に年配の徳田が握手しながらフランクな物言いで口を開いた。そうして、およねが彼らの身元を紹介する。
「この徳ちゃんが建設会社の会長さんで、広瀬はんは電話会社の社長さんや」
およねに紹介されるやいなや徳田と広瀬が紗綾に名刺を手渡した。
だが次の瞬間、2人の名刺を受け取った紗綾は、またしても驚いた。徳田は大手ゼネコン竹林組の会長で、広瀬は大手通信会社KUUIの社長。どちらも一部上場企業だった。
畏れ多いと思った紗綾は身を縮こまらせて、もう一度、深々と頭を下げた。
「紗綾、そんなに固まらんでええ。ただのオッサンらや」
「ハッハハハ、確かにただのオッサンですわ」「フホッホホ、およねさんは相変わらずやの」
「ふんっ、紗綾、このオッサンらを今日呼んだんは、お前らがこれからすることに協力してくれるからや。どうや、お前らがこれから必要としている人らやろ?」
「はい確かにそうですが、なんか急過ぎて私、かなり戸惑ってます。でもどうして、およねさんはここまで私たちに…?」
「そらぁ、決まっとるやろ。お前が咲かす花を早く見てみたいからや」
「……あのぉ、およねさん?」
「なんや?」
「もし良かったら、およねさんもコンレットに引っ越されたどうかなぁと思って」
「それは必要ない。わしゃ、あの泥のような汚い町で、お前らのような変わり種を探して花を咲かすんが好きなんじゃ。それに、アンナバネッサやゴリ男みたいな珍獣にも出会えるからのぉ、なかなか飽いてけぇーへんのんや。フォホホホ、せやから要らんことはせんでええ」
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