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「あっ、はい、ありがとうございます。これもおよねさんとミケのおかげです」


 要らぬ詮索は避けねばと『ミケのおかげ』というフレーズだけはごにょごにょと口ごもらせた。およねもそれを察した。


「今日来たのはのぉ、お前さんに紹介したい人らを連れてきたんや」


 そう言うなり、およねがスーツ姿の中年男性を呼び寄せた。


宮前(みやまえ)さん、この娘が二条紗綾や。紗綾、こっちがみずお銀行の宮前さんや」


 もうすでに、紗綾のことをなにもかもおよねから聞いている様子の宮前は紗綾を前にして深々と頭を下げた。


「二条様、この度は御当選おめでとうございます。兼光様からお聞きして、参上致しました。まだお身体が完治されておられないのに、いきなりぶしつけに訪れてしまい大変、恐縮しております。何卒、どうかこれからも、当《《みずお》》銀行をよろしくお願い致します。──それと、早速ですが、換金させていただくまで少しお時間を頂戴することになります。それまでの間、何かと入用だと思いますので何かのお役に立てればと、こちらを先払いとして持って参りました」


 宮前はそう言うと、自分の名刺とみずお銀行のロゴが入った紙袋と見舞金を手渡した。


「あっ、えっ!? あ、えぇ、はい、こ、こちらこそよろしくお願いします」


 紗綾は、突然の訪問客から手渡され物に戸惑いつつも、ぎこちなく頭を下げる。と、その紙袋等を見たおよねが皮肉っぽく宮前に話しかけた。


「今日は宮前さん、えらい気が利くんやな」


「いやぁ~、兼光様、手厳しいお言葉、恐れ入ります」

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