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「ふっ、ちょっとは人の話を聞く気になったようやな。じゃあ、とりあえずお前の家に行こか。ほんまに当たりくじが盗られたかどうか確かめんとな」
「だから、盗まれたって言ってるでしょ!」
「さあな、それは俺が見て判断する。隅々までな」
厭らしい笑みを見せる恵介は、先に紗綾の家の方へと歩き始めた。
(やばい、どうしよう。隅々までって。このままじゃ、お腹に巻き付けてある当たりくじを見つけられてしまう。それにもしも一等の50億が当たったと知られたら私を殺してでも奪いかねないわ。こいつはそういうやつよ。でも今はこいつの言うことを聞かないと万引きで捕まってしまう)
万事休すの紗綾は沈んだ面持ちで、とぼとぼと恵介の後に続いた。何か良い方法がないか歩きながら頭をフル回転しだす。
数分後、紗綾の家に中に入ると恵介が驚きとともに口を開いた。
「えらい散らかってんな。さっき片付けてたって言うてたけど、まだほとんど片付いてないやん。それに、引き出しが開けっ放しやし、指紋も出てこえへんってことは、間違いなくこれはプロの犯行やろ!?」
「警察も、そんなこと言ってたけど」
「それで、宝くじはどこに隠しとってん?」
「…カバンの中よ。さっき言ったでしょ。当たりくじは財布の中に入れててカバンごと引ったくられたって」
「おまえ、宝くじが当たったこと誰かに喋ったか?」
「そんなん、誰にも喋る訳ないし」
「じゃあ、なんでお前の家とか、お前自身がピンポイントで狙われとんねん?」
「そんなことわたしも知りたいわよ!」
恵介が疑うのも無理はなかった。このマンションでは、紗綾の家だけが泥棒に入られ、紗綾だけが引ったくりにあったのだから。
「ほんまに盗まれたんか?」
「そうよ。嘘だと思うなら警察にも聞いてみたらいいじゃない」
「くそっー」
なんとか恵介を信用さすことに成功したようだ。だがこの時、恵介は腸が煮えくり返る思いをしていた。7億もの当たりくじを盗まれたと、よくもいけしゃあしゃあと言えたもんだと。
「わかった。どうもほんまに盗まれたようやな。せやけど、俺と共同で買うた宝くじを易々と盗られやがって! 紗綾、おまえ、どうやって俺に責任を取るつもりや!?」
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