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「それと香織さん」


 急に紗綾に名前を呼ばれた香織は少し戸惑いを覚えつつ上ずった声で返事した。


「は、はい」


「香織さんには、これからは接客の指導の方へまわってもらいたいと思っています。あとからも話しますが、新しく購入する土地に温泉やら宿泊施設なんかを作っていきます。もちろん海外から来るお客様も視野に入れてですが、そのときにお客様をおもてなしできる人材の育成をお願いできますか?」


「それは、はい、頑張ります」


 真っ直ぐ紗綾に顔を向けた香織は深々と頭を下げた。


「総支配人、香織さんを借りても問題ないですね?」


「はい、もちろん問題ないです」


 よしと小さく頷いた紗綾は、次にアンナの方へ顔を向けた。


「アンナさん」


「はぁ~い」


 アンナは私の番が来たと少しワクワクしているよう。


「アンナさんには、持ち前のセンスを生かしてもらうことに決めました。あそこの18ホールあるゴルフ場の3ホールを富裕層を向けの温泉つき別荘兼住居を建てようと思っています。それとあとのホールは今流行りの手ぶらでもキャンプ気分が味わえるグランピング施設を建設する予定です。それとオートキャンプ場とアミューズメント施設もですね。あとはキャンピングカーを所有しているシニア向けの温泉付き長期宿泊施設を作ろうと考えています」


「ちょっと紗綾ちゃ、いやオーナー、あそこなら温泉も湧いてるし、オートキャンプ場とグランピングと富裕層を狙っての別荘はロケーションもいいからいけると思うんだけど、でもね、キャンピングカーを持っている人がわざわざ宿泊しになんて来るのかしら?」


「フッフ、アンナさん、今まで通りの呼び方でいいですよ。そのことは、前に調査会社でリサーチしたことがあって、リタイア組のシニア世代さん達は家を売ってキャンピングカーで諸国漫遊している方が多いらしいのです。でも、やはり特定の住所を持たないと保険や年金なんかの公的なものや郵便物とかにも困るみたいです。それと、着替えやらの荷物の問題もあるようですし、ずっと車で旅し続けるのはしんどいみたいです。だから、格安で田舎の土地を提供してあげたら全国各地からそこそこキャンパーが集まってくるんじゃないかとみています。それになによりゴルフ場にはクラブハウスもありますんで、そこのお風呂場をもっと拡張して温泉を引いてあげればと、あと、レストランも厨房もあるみたいなので、そこもフルに活用できたらと考えています」


「へぇ~すごいすごい、そこまで調べれてるんだぁ~、紗綾ちゃん、あんたやっぱ、ただもんではないわね!」


「フッフフ、えっと、なのでアンナさんにはゴルフ場以外にも、海外からも来るお客様も想定して温泉施設やらアミューズメント施設のアイディアやイベントなどのマネージメントなんかを担当してもらえれば嬉しいです」


「うんうん、もちろんやらしてもらうわ! 私、そんな仕事したかったのよねー!」


「でも、アンナさんの本職のドラッグクィーンは当分できないと思いますけど、それは大丈夫ですか?」


 その問いにアンナは頭を振り、大きな目を光輝かせながら答えた。


「うぅ、うん、それは大丈夫、どうせドラッグクィーンで収入を得れる仕事なんてあまりまわってこないから…だから紗綾ちゃん、わたくしあそこの田舎で目一杯楽しませてもらうわ~♪」


「それはなによりです。それと寛太さん?」


「はいよ」

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