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「わたしは、皆さんの希望通りコンレットベルヴューと寛太さんの故郷の土地を買うことに決めました!」
次の瞬間、「ワァァァー」と喝采が沸き起こった。紗綾はちょっとの間、静まるのを待ってから再び語りだした。
「はい──これからは皆さんと一緒になにかすばらしいものを作りあげたいと思っています。ですが、私はなにぶん人生経験が浅いのもので、あまり皆さんのように色んなことを知りません。だから、どうかこれからも私にご指導ご鞭撻のほどよろしくおねがいします」
紗綾は、そう言うとペコリと頭を下げた。そのとたん、様々な返事が返ってきた。
「もちろんや!」「がんばれー若くて可愛いオーナーさんよ」「今までよー頑張った、こっちこそよろしくたのんます」「紗綾ちゃん、こちらこそよろしくね」「オーナーさん、わしもよろしくやで、一緒にこれからも頑張ろうや」「うんうん、頑張ろうね♪」
またしても歓喜の声が沸き上がる。と、紗綾は皆の心意気を噛みしめるように口元をグッと引き締めた。そうして、ゆっくりと再び話し始めた。
「えっと、二日前におよねさんから今日のことを聞いてから、ずっと考えてたことがありました。それは、今後みなさんに何をしてもらうかです。え~、皆さんも知っての通り、ホテルやゴルフ場を購入するにあたって、今回当選した金額はあっという間に飛んでいってしまいます。なので、当面の運転資金なんかを銀行から借り入れるつもりです。そして、まず皆さんに知っておいてもらいたいのは、高額当選したからといって余裕はないということです」
皆は紗綾の話に真剣な面持ちで耳を傾けている。皆の顔をゆっくりと見渡した紗綾は、一呼吸おいてから話を続けた。
「さて、ここからが本題です。まずはコンレットは今まで通りやっていって欲しいのですが、コロナ渦もそろそろ終息を迎えるみたいですので、今から3年以内には買い取った金額分を全額を回収してください」
このとき紗綾はキリッと引き締まった顔つきで総支配人であるまさるに視線を注いだ。すぐさま、まさるが頭の中のそろばんが弾きだす。まさるは、できない数字ではないと、紗綾の視線をとらえ静かに頷いた。その頷きは、まさるの決意が伝わってくる重い返事だった。
この大きな目標は、紗綾がこの2日の間に、善三と香織の知恵を借り秘密裏に導きだしたもの。
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