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恵介が店の方へと歩こうとする。その姿を見た紗綾は、あせって阻止しようと試みる。
「もとはと言えば、あんたがわたしの人生をボロボロにして貧困女子にしたんだろーに。あんたにも責任があるんでしょ! ──それに、あの宝くじなら、もう無いわよ。泥棒に盗まれたんだから」
そして咄嗟に嘘もついた。恵介のことだ。当たりくじの在処をしつこく追及してくるはず。そのあとは万引きをネタに、必ず当たりくじを取り上げようとするだろう。
「なんやと! 7億の当たりくじを盗まれたやと!」
「そうよ」
「おまえ…」
当たりくじを盗まれたと聞いた恵介のこめかみらピキピキと青筋が浮き出だした。拳も強く握ったまま紗綾を睨みつけている。
「なによ、なんか文句でもあんの?」
この状況、紗綾の方がかなり不利だというのに、目一杯の強がりを見せた。
「で、おまえはそれも警察に被害届をだしたんやろうな?」
「あたりまえでしょ!」
この時、恵介は必死で頭を働かせていた。当選番号はわかっている。もしも犯人が換金に訪れても無効になるはず。それに警察にも捕まるだろうと。まだ望みはある。恵介は必死に紗綾に対する怒りを抑えた。だが、やはりこんな高額な宝くじを盗まれたと、あっさり言う紗綾を許せなかったようだ。
「でもな紗綾、7億もの当たりくじを簡単に盗まれたって言われても、あっそうですかって納得できると思うか?」
「そんなこと知らないわよ。それにあの宝くじは、あんたには関係ないことでしょーに!」
「そうか。じゃぁわかった。おまえがそんな態度をとるんやったら、やっぱさっきの万引きを店員に知らせてくるわ。たかが万引きでも前科一犯にはかわりないからな。これからお前の将来、就職にも結婚にも響いてくるやろうけど…。──まあ俺の知ったことじゃないしな。じゃあな、首を洗って待っとけよ」
「ちょ、ちょっと待ってよ……わ、わかったわよ。で、私にどうしろって言うのよ?」
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