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ネットの情報によれば、ここから500メートル離れた先のコンビニでラト10が買えるらしい。今日を逃せばもう後はない。せっかくのミケの声、いや天の声というべきだろうか。
爆発する寸前まで、すぐに手が届きそうな夢があった。高級車やバッグ、アクセサリーにジュエリー、そのほか洋服などの欲しい物あれこれ。それに、旅行や留学に乗馬、ホテル住まいもしたかった。セレブのような生活も待っていた。後、世話になった人達にも計り知れない最上級のお礼もしてあげたかった。なんなら、いくらするかわからないけれどホテルの一つ、ゴルフ場の一つ、山の二つや三つ、田んぼの百反や二百反を購入しても良かった。今までパッとしなかった私の人生に明るいスポットライトがあてられるはずだった。それなのに今は…
つい先ほどまでの紗綾は退院後、背に腹はかえられぬと実家にしぶしぶ戻って一からやり直そうと考えていた。溜まりに溜まった借金も返済していかなければならない。とりあえず同級生の大ちゃんのスーパーでパートとして働かせてもらおうかと真剣に思っていた。天国だった場所から突如、絶望の淵に立たされたような心持ちだった。
だが、さっきのミケの声が一縷の光のように紗綾の心に射し込んだ。この僅な希望が紗綾の気持ちを前向きにさせてくれた。次第に身体中から、ふつふつと元気が湧き出してくる。脳も活性化しだしている。なんの根拠もないが、ミケの言葉を信じてみよう。まだ私の人生このままでは終われない。
「よしっ!! まだいける! 絶対に夢を叶えてやるんだから!!」
口から気合いを迸り、病院の通路を松生杖をつきながらひょこひょこと勢いよく歩く。なにか熱いものが紗綾の胸の中から込み上げてきたようだ。
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