13
梅雨のように雨が降り続けるから秋の長雨を秋入梅と呼ぶらしい。なんでも、梅雨よりもよく降るのだとか。
ここ京都市内から約50キロ離れた街にも冷たい雨が降りだしてきた。
両膝を抱えたまま顔を上げ、再び外の雨の景色を眺めている紗綾。そんなとき、突如、天からも声が降ってきた。
いや、そのような気がしたのだ。正確には後ろから聞こえてきたといった方が良いのかもしれない。
『紗綾、そんなに落ち込むな。俺はお前の傍にいて、これからも守ってやるにゃん』
「えっ!? 涼平君? …もしかしてミケ、ミケなの?」
まさしく、その口調や声は紛れもなく涼平のものだった。
『そう、昔お前に助けられたミケだにゃん。あのときはあんがとな。──いいか、紗綾、よく聞くにゃんよ、今すぐこの前と同じ宝くじを買いに行くにゃん、番号は紗綾の好きな数字を適当に選べばいいにゃん』
「えっ? えっ? どういうこと? ちょ、ちょっと涼平っ あっいや、ミケ?」
その後の言葉はなかった。空耳かと思ったが、あまりにもはっきり聞こえていたので疑う余地はなかった。紗綾は、涼平がどこかにいるものと思い、天井をぐるぐる見渡した。次いで両手を上にあげた。
そのような紗綾の奇矯な行動に皆が遠目で見ていた。その中の一人、アンナが紗綾に近づき心配そうに声をかけた。
「どうしたの紗綾ちゃん?」
「あっいえ、別に…」
気が触れてないといいがと、皆が一斉にそう思っていた。そんな彼ら彼女らの哀れみに満ちた視線を受けながら、紗綾はなにかを考え込んでいた。
(宝くじを買えって言われても、今はぜんぜんお金がないしどうしよう………あっそうだ! あのときのお金があったんだ!)
思い出したように紗綾は松葉杖をついて歩きだす。
「どこ行くの?」
咄嗟に発した香織の言葉が耳に入らないよう。紗綾は急いで自分の病室に戻って行った。そして、テレビの下のキャビネットの引き出しを開けおよねからもらった五百円玉を握りしめた。
約半年前、お乞食をしていたときに得た綺麗なお金だった。ちなみに、その頃およねから借りたお金は当たりくじ同様、封筒ごと焼け焦げていた。ところが、ポケットに入れていたこの五百円玉だけがなんともなかったのだ。
病室から出た紗綾はまた皆の元へと歩みだす。何ヵ所か足の骨も折れていたが、もうとうにくっついていた。だが足の靭帯を損傷していたのと、長い間歩いていなかったせいで筋力がかなり弱っていたのだ。
「はぁ~はぁ~はぁ~、あのぉ、香織さん、スマホを借りてもいいですか?」
「うん、いいわよ」
快くスマホを貸してくれた香織に感謝しつつ慣れた手つきで画面をタップしだす。
そうして紗綾は、ラト10の情報を調べだした。
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