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「可愛そうに、爆発に巻き込まれたんやな──もう大丈夫です。この猫は死にましたわ」
救命士の1人がそう言うと、絶命しかけた善三の元へと戻り、他の救命士のサポートに再びはいった。
「クリアー!」 ──バンッ !!──
「ダメだ…」
またもや紗綾の周りに人がいないか確かめ、2度目の電気ショックを行った。が、反応がなかった。救命士の表情に焦りが生じだす。
「もう一回やってみよう」
「はい」
「準備オッケーです」
「よしっ、クリアー!」
再びは紗綾の体が小さく跳ねた。
それでもだめだった。なにをしても意識が戻らない。それどころか、呼吸をする兆しもない。ずっと心臓は止まったまま。紗綾の蘇生を行っていた救命士が、小さく頭を振った。やるせない顔をする救命士達。やれることはやったのだと、自分達に言い聞かせているようだった。
ところが、ちょうどその時だった。倒れた三毛猫の身体からフワッとなにかが浮き出てきた。おそらく涼平の魂だろう。空中に浮いた魂が2つに別れると、紗綾と善三の口の中へとすぅーと入っていった。
昔から、猫の魂は九つあると云われている。涼平は自分の魂を紗綾と善三に分け与えようと試みた。しかしながら、猫と人間では魂の種類が違うしキャパシティも違う。それに妖し猫として生まれて初めてする方術だった。
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