オラクルのミラクル
切り拓かれた山あいの小さな街は、静かな夜を迎えるのが早かった。
しかし、営業終了直後の道の駅では、盛大に燃えている車を前にして騒然としていた。
突然の爆発音と直下型地震のような地響きで、道の駅のスタッフ達が外に出て、どよめきだしている。
そのような最中、歩道橋の上にいる男達が何事もなかったような立ち振舞いで、迎えに来たコンパクカーにそそくさと乗り込んだ。そうして、監視カメラが存在しない農道を通り旧街道筋へと車を走らせた。
車の中では、絹田という男が電話で任務を遂行したことを藤木に伝えだす。
「ボス、成功ですわ」
「よし、よくやった。あとの処理もぬかるなよ」
「了解」
途中、橋に差し掛かると、絹田は犯行に使用した起爆装置とスマホと革手袋を、流れが激しい川に投げ捨てた。
一方、少し離れた工場の影で隠れていた惠介達は爆発音を聞くなり、誰にも気づかれないようにして駐車場まで走ってきていた。
だが次の瞬間、戦場のような場面を目にした彼らは驚愕することになる。
無惨な姿になって燃えている軽自動車から約10メーターほど離れた場所には、紗綾を守るようにして焼けただれた中年男性が、紗綾に覆い被さっていたのだ。
それに、焼け焦げたタクシーの中でも大きな人間二人が、ピクリとも動かず絶命しかけているようだった。その上、爆風で吹き飛ばされたのか、涼平の姿が見当たらない。
これは、ほぼ全員が即死だったかもしれない、誰もがそう思う光景だった。
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