4
「結城、間違いないんやな?」
「はい、間違いおまへん」
「そっか──それじゃ、絹田に代わってくれ?」
結城という男はイヤホンマイクを外しもうひとりの男に手渡した。
「はい、ボス?」
「いけそうか?」
「はい、大丈夫です。ただ、この状況なら、あのガキも一緒にっていうことになりますが、どうします?」
「うむ、仕方ない」
少し前、一眼レフのファインダーを覗いていた男は、八雲善三とその傍らにいる若い男の顔写真を撮り、その写真を写メで藤木に送っていた。
八雲善三本人だと確認した藤木は結城に、その若い男と紗綾の顔写真を照らし合わすように指示をだす。
元々、結城は見当たり捜査を専門としていた捜査官だ。見当たり捜査とは、指名手配犯などの顔写真を記憶し、街中に出てそれらの犯人を発見し逮捕すること。
捕まりたくない犯人はあの手この手を使って変装する。結城は、そんな犯人を見落とさない熟練した捜査官だった。
では、どうして藤木は、紗綾達がこの道の駅に来ることを知っていたのか。それは、フリマアプリで網を張っていたからだ。
本来なら引ったくりで盗んだ品物は証拠隠滅のため海に沈めていたのだが…そうも言っていられない状況になっていた。
あいりん地区から紗綾が消えた時から、藤木は部下に盗ませたパソコン等を京都と大阪の地域のフリマアプリに出品するよう配下の者に指示をだしていた。紗綾が網にかかることを願って。
それにまんまと引っ掛かったのがアンナだった。元より、出品した当初から他の買い手も現れていた。だが、部下である結城にその都度、買い手の顔を見定めてもらい別人とわかれば売らずにいたのだ。
お読みいただき、ありがとうございます。 少しでも面白いと思っていただけましたら、ブックマークや評価をぜひお願いします。 評価はこのページの下側にある【☆☆☆☆☆】をタップすればできます。




