フィッシング殺人
南丹市の市街地に着いた頃には、もうすでに夜の帳が下りていた。あれから約一時間後、紗綾の機嫌が収まらないまま、刑事との待ち合わせ場所である道の駅近くのホームセンターの駐車場に到着した。
犯人と思わしき出品者に怪しまれては元も子もないからだ。
「さあ、ちょっと早いですが着きましたで」
運転手の高槻がいった。
「まだ、来てないみたいね」
アンナがキョロキョロと辺りを見回した。
「あっ! 来た来た、あれじゃないかしら?」
アンナの視線の先には、シルバーのセダンの車と白のワゴン車が駐車場に入ってくるところだった。
「そうやな、きっとあれやな。いかにもやな…」
善三が車に乗っている中年男性と若い男を見てつぶやいた。中年男性の方は柔道の有段者だろう。耳が潰れ短髪で目つきが悪い。若い男の方はフレッシュ感あふれる新米刑事のようだ。後部座席にも引ったくりの事件の時、紗綾の担当だった刑事の姿も見てとれる。後ろのワゴン車には、鑑識の制服を来た警察官が複数乗っているようだ。
互いが車から降り、簡単に挨拶を済ませると、紗綾と面識のある刑事から出品者との接し方などあれこれのアドバイスを受けた。
「じゃあ、手はず通りにお願いします」
「はいっ!」「よろしく」
即刻、気分を一転した紗綾はかなり緊張気味。もしもの時のために父親のふりをした善三が一緒に付き添うことになった。
さっそく高槻が運転するタクシーで道の駅に向かう。アンナと涼平は後部座席で待機。警察も観光客を装い道の駅の駐車場で待機する。警察車両の白いワゴン車は少し離れたところで停車して刑事からの連絡を待つことに。
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