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「涼平、どうしたんや? 珍しい昆虫でも見つけたんか?」


 涼平の目と鼻の先まで近づいた善三が、うっすらとした笑いながら問いかける。


「えっ、虫なんて見たくないし!」


 しぶしぶついて来た紗綾が思わず声をだすと、首を振りあからさまに嫌な顔をみせた。


「ちゃうちゃう、そんなんとちゃう。あんな、この辺りの地下に温泉が湧いとるんや」


「ファッハハハハ、なにをアホなこと言うとんねん」


「そうよ、危険をおかしてここまで来たのに、もぉー!」


 再度、確認するように涼平は膝と両手をつき、耳を地面に近づけると、すこぶる真剣な顔をしてつぶやいた。


「うん、やっぱり間違いない、ここを掘ったら温泉が出てくるはずや」


 以前から不思議な力を持っている少年。霊が視えるおよねとも夜な夜な長話しているのを知っている。善三は、物事を真っ直ぐ見据えるような涼平の眼を見て少し耳を傾けようと思った。


「涼平、ほんまに温泉が出るんか?」


「ああ善三さん、間違いないわ」


「へ~そうなのね」


 半信半疑の紗綾も感心する素振りを見せるが内心はどうでも良かった。しかしここで、いきなり涼平が突拍子もないことを口にする。


「紗綾、この辺りの土地を全部、買え。ここは黄金の土地や、ほんまにええ土地や!」

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