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「あん時、わしらも子供の借金は親は払わんでもええって法律で決められとるんやって何度も言うたんやが生真面目な静さんは、寛太の口から詳しい事情を聞かなあかんって、わしらの言うことに、聞く耳もたへんかったんや。あんとき寛太が一度でも帰ってきて、静さんにそのことを伝えて安心させてやってたら、静さんも気を揉んで寝込むことはなかったろーに。寛太も子供の頃から短気なとこもあったけど、気の小さいとこもあった子やったからな、母親に合わせる顔がなかったんかもしれん。まぁ、今から言うてもなんも始まらんわ、ほんまわしらも悔やんどるんやって」


「それで、その借金取りはこの家を押さえていけへんかったんですか?」


 善三がなにげに問いかけた。


「この家はな、静さんが先祖から代々受け継いだ家やのんと、この土地はゆくゆく寛太のためになるからって、家と田んぼと山だけは渡さへんかったな。それになんや、借金取りも、まだ寛太に相続されてへんかったからそこまではしよれへんかったわ」


「それで、その田んぼと山ってどの辺りなんですか?」


 今度はアンナが興味をそそられた。


「あぁ~、おそらくあっちからあっちらへんやな」


 芝刈り機を無造作に地面に置いた老人は、遠くの山々を指差し、すぅーと動かして12時の方角から4時の方角までを大まかに示した。

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