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「そうや、ごく潰しや! あいつのせいで、ここで一人で住んでた静さんが病気になってもうたんや」
「すいません。どういうことかしら?」
思わずアンナが前に出た。
「どうせ、あんたらも何か目的があってここに来たんやろ。けどな、家の中には金目のもんなんかなんもありゃせん」
「いやいや、ご主人、そんなんとちゃうんですわ。ワシらはただ、寛太に家がどんなふうになってるか見て来てくれって頼まれただけなんですわ」
「ほんとうにそうなんです。勘違いしないでくださいな」
あわててアンナも、老人に手のひらを見せひらひらと振った。
「そうか……それなら言わしもらおう。あの小せがれのせいで静さんは病気になって亡くなったんや。もうかれこれ12年も前のことよ……寛太が大阪で誰かの保証人になったんが悪かったや。それからというもの、あいつは大阪にある家のローンとか借金で首が回らんようになったらしい。で、終いには博打に手をだしてえらいことになってしもうたんやて」
それからも老人は、過去に起こったことを延々と語りだした。
借金とりがこの家に押し掛けてきたことや、寛太の母親である静さんが、その借金を少しづつ返済していたこも。
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